The Japanese Journal of Antibiotics
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皮膚科領域におけるPanipenem/Betamipronの基礎的・臨床的検討
荒田 次郎秋山 尚範神崎 寛子高橋 久田中 由比高浜 英人藤村 真美櫛渕 さやか石橋 康正尹 浩信安部 正瑞小宮根 真弓久木田 淳比留間 政太郎松井 良介兼重 純明原田 昭太郎皆見 春生玉木 毅安西 喬実川 久美子斎藤 隆三漆畑 修浅島 裕雄安野 洋一岸本 三郎小西 啓介竹中 秀也岡 史子上田 富士雄朝田 康夫山脇 光夫爲政 大幾今村 貞夫立花 隆夫大谷 稔男秋岡 成美土井 顕増田 理恵赤井 容子早川 實林 瑞世田邊 洋植木 宏明稲垣 安紀三好 薫中務 晶弘梅村 茂夫州脇 正雄赤木 理中北 隆小玉 肇山本 康生池田 政身堀 嘉昭永江 祥之介
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1992 年 45 巻 2 号 p. 197-207

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抄録

PanipenemとBetamipronの1:1の合剤 (PAPM/BP) につき, 表記の多施設において皮膚科学的に検討した。
53例の皮膚感染症患者にPAPM/BPを試用した。臨床効果の評価は50例が対象となった。ほとんどの患者で本剤500mg (PAPMの力価) を1日2回点滴静注した。有効率は78%であつた。このうち二次感染症15例を除いて集計すると有効率は85.7%となった。悪心・嘔吐3例, 頭痛・頭重感2例, 発赤と掻痒1例, 下痢1例がみられた。発赤と掻痒のみられた症例は同時に悪心・嘔吐を訴えた。この症状は最初の点滴静注開始1時間後に始まつた。治療中止により翌日には症状はすべて消失した。検査値異常は53例中7例にみられた。肝硬変と肝癌を基礎疾患に持つ1例の患者で貧血が認められた (RBC 372×104/mm3→275×104/mm3, Hb 11.9g/dl→8.8g/dl, Ht 35.1%→260%) 以外ではすべて軽度の異常であつた。
PAPM/BP 500mg 30分点滴静注後の皮膚内移行を, 皮膚外科手術時に採取された手術組織の一部及び血液につき検討した。皮膚内濃度/血清中濃度比は0.20~0.97の値を示した。PAPMの皮膚内濃度は点滴静注終了後6時間にわたり臨床分離株のMIC80以上の濃度を示した。
ラットではPAPMの体内代謝が異なるためか, 皮膚内濃度は血清中濃度に比べ極めて低かつた。
臨床分離のStaphylococcus aureus株の少数例がPAPM, Imipenem (IPM) に対し耐性であつた。しかし, 同時に検討した他剤に比べ, PAPM, IPMは良好な抗菌活性を示した。
以上を総括して, PAPM/BPは皮膚科領域の感染症治療に有用な薬剤と思われた。

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