1992 年 45 巻 2 号 p. 197-207
PanipenemとBetamipronの1:1の合剤 (PAPM/BP) につき, 表記の多施設において皮膚科学的に検討した。
53例の皮膚感染症患者にPAPM/BPを試用した。臨床効果の評価は50例が対象となった。ほとんどの患者で本剤500mg (PAPMの力価) を1日2回点滴静注した。有効率は78%であつた。このうち二次感染症15例を除いて集計すると有効率は85.7%となった。悪心・嘔吐3例, 頭痛・頭重感2例, 発赤と掻痒1例, 下痢1例がみられた。発赤と掻痒のみられた症例は同時に悪心・嘔吐を訴えた。この症状は最初の点滴静注開始1時間後に始まつた。治療中止により翌日には症状はすべて消失した。検査値異常は53例中7例にみられた。肝硬変と肝癌を基礎疾患に持つ1例の患者で貧血が認められた (RBC 372×104/mm3→275×104/mm3, Hb 11.9g/dl→8.8g/dl, Ht 35.1%→260%) 以外ではすべて軽度の異常であつた。
PAPM/BP 500mg 30分点滴静注後の皮膚内移行を, 皮膚外科手術時に採取された手術組織の一部及び血液につき検討した。皮膚内濃度/血清中濃度比は0.20~0.97の値を示した。PAPMの皮膚内濃度は点滴静注終了後6時間にわたり臨床分離株のMIC80以上の濃度を示した。
ラットではPAPMの体内代謝が異なるためか, 皮膚内濃度は血清中濃度に比べ極めて低かつた。
臨床分離のStaphylococcus aureus株の少数例がPAPM, Imipenem (IPM) に対し耐性であつた。しかし, 同時に検討した他剤に比べ, PAPM, IPMは良好な抗菌活性を示した。
以上を総括して, PAPM/BPは皮膚科領域の感染症治療に有用な薬剤と思われた。