The Japanese Journal of Antibiotics
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塩酸セフェピムのラットにおける交配前, 妊娠期及び授乳期皮下投与試験
甲斐 修一河村 寿石川 克己河野 茂生酒井 篤子黒柳 幸司門田 利人高橋 紀光
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1992 年 45 巻 6 号 p. 642-660

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抄録

セフェム系抗生物質塩酸セフェピム (CFPM) を150,500mg/kg/日及び1,000mg/kg/日及び対照薬としてL-アルギニンを724mg/kg/日の割合でCrl: CD (SD) ラットに, 雄では63日間, 雌では14日間, 1日分の投与量を2等分して午前と午後の2回連日皮下投与した後, 投与を継続しながら雌雄を同居させ, 妊娠の成立した各群半数の雌には更に妊娠0日目から妊娠19日目まで, 又, 残り半数の雌には妊娠0日目から分娩後21日目まで投与を続け, 概略次の結果を得た。
1. CFPM1,000mg/kgの投与によりF0雌雄ラット全例に投与開始後1週にわたり軟便, 又, 雄7例, 雌12例に投与部位の脱毛がみられた。
2. CFPM 1,000mg/kgのF0雄ラットで投与28日目から63日目に体重の増加抑制が認められ, 更にCFPM各投与群のF0雌ラットで投与第1週に摂餌量の減少がみられた。
3. F0雌雄ラットの生殖能に対するCFPMの影響はみられなかった。
4. CFPM 1,000mg/kgの投与によりF0雌雄ラットの腎重量の増加, 雄ラットで副腎重量の増加がみられた。一方, CFPM投与群の雌ラットで盲腸が肥大したが, この変化はラットでは一般的に抗生物質の投与でしばしば観察され, 腸内細菌叢の変化により起り, 可逆的変化とされているため, CFPMに特異的な変化とは考えられなかつた。
5. 妊娠F0ラットから得られた胎児 (F1) に対するCFPMの影響はみられなかった。
6. 母獣 (F0) の出産状況及び新生児 (F1) の生存率に対するCFPMの影響はみられなかつた。
7. F1ラットの分化の状況, 行動発達, 学習能力, 記憶, 運動能力, 運動性及び情動性に及ぼすCFPMの影響はみられなかった。
8. F1ラットの体重及び摂餌量に及ぼすCFPMの影響はみられなかった。
9. 雌雄F1ラットの器官重量に対するCFPM投与の影響はみられなかった。
10. F1ラットの生殖能及び出産状況に対するCFPMの影響はみられなかった。
11. 妊娠F1ラットから得られた新生児 (F2) の生存率, 体重及び器官重量に対するCFPMの影響はみられなかった。
以上の結果, 生殖及び発達に関する指標から判断して, 本試験におけるCFPMの親動物 (F0) 及び次世代 (F1) に対する無影響量は1,000mg/kg/日と考えられた。

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