The Japanese Journal of Antibiotics
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Cefepimeの一般薬理作用
後藤 新天野 学酒井 篤了原 美奈子高橋 紀光
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1992 年 45 巻 6 号 p. 661-680

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抄録

新規注射用セフェム系抗生物質Cefepime (CFPM) 及びその代謝物であるN-Methylpyrrolidine-N-oxide (NMP-N-oxide) の一般薬理作用について検討し, 以下の結果を得た。
1. CFPMは最高用量において, マウスの自発運動量を減少させ, 誘発催眠時間を延長し, 又, 体温の低下及び鎮痛作用を示した。その他, マウス及びラットの一般症状, 中枢神経系及びウサギの自発脳波活性に対する作用を有しなかった。
2. CFPMはマウスにおいて筋弛緩作用を示さなかった。
3. CFPMはモルモットから摘出した小腸平滑筋に対する直接作用を示さず, 各種収縮薬に対する拮抗作用も有しなかった。
4. CFPMは麻酔下のウサギにおいて, 呼吸運動の増加, 血圧下降, 心拍数の減少を惹起し, 心電図においてはR振幅の増加, R-R間隔の延長を示したが, 血流量に対しては著明な作用を有しなかった。これらの変化は主にCFPM製剤中にpH調整剤として含有されるL-Arginineの影響と考えられた。
5. CFPMはマウスの腸管内輸送能, ラットの胃液分泌に影響を及ぼさなかった。
6. CFPMはラットの尿量及び尿中への電解質排泄を一時的に減少させたが, これらの変化はL-Arginineの影響と考えられた。
7. CFPMは100mg/mlでウサギの全血凝固時間の延長傾向を示したが, この作用はLArginineによるものと考えられた。その他, ラットのカルシウムイオン再加凝固時間及びプロトロンビン時間や赤血球抵抗性に対しては影響を及ぼさなかった。
8. CFPMの代謝物であるNMP-N-oxideは, 循環器系に対しわずかな作用を示しただけで, その他の系には著明な影響を及ぼさなかった。
従つて, CFPMは臨床使用に際して重篤な有害反応に結び付くような薬理学的性質は, ほとんど有しないと考えられる。

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