The Japanese Journal of Antibiotics
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45 巻, 6 号
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  • I. Cefotiamとの併用効果
    出口 浩一, 横田 のぞみ, 古口 昌美, 中根 豊, 鈴木 由美子, 深山 成美, 石原 理加
    1992 年 45 巻 6 号 p. 597-604
    発行日: 1992/06/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Methicillin-resistantStaphylococcus aureus (MRSA) は多剤耐性菌であることから, 有効な抗菌薬剤が少ない。これによりMRSA感染症には併用療法が試みられているが, 近年に分離されるMRSAの大部分は高度耐性化しており, 従来においては有効とされていた抗菌薬剤にも耐性なMRSAが増加しているため, 併用の組み合せにも問題点が生じている。
    そこで, 中程度のMRSAに比較的強い抗菌力を示すCefotiam (CTM) と高度のMRSAにも強い抗菌力を示すMinocycline (MINO) を用いて, MRSAに対する両薬剤の試験管内における抗菌併用効果を検討して, 以下の結論を得た。
    1. MINO感性MRSAに対する両薬剤の抗菌併用効果は, CTMのMIC値が中程度・高度には無関係にMINOの臨床的に期待し得る1MICもしくはsubMIC濃度存在下において, 強い抗菌併用効果が認められた。
    2. MINO耐性MRSA, すなわちMINOの臨床的に期待し得る血中濃度の上限を越えるMIC値を示す株には, 両薬剤の強い抗菌併用効果は認あられない。これらのことから, MRSAに対する両薬剤の抗菌併用効果は「MINOの抗菌活性依存的」であることが示唆された。これによりMRSA感染症に対する両薬剤の併用療法においては, MINO感性, 耐性の区別によつて有用性の判断を可能にすることから実用的である。
    3. MINO感性MRSAにおける両薬剤の強い抗菌併用効果は, MINOによる細胞質膜障害が生じた後においては, MINOの抗菌作用に加えてCTMの抗菌作用が加わるためと考えられたが, それらはFICindexの値にも反映していた。
  • II. Cefuzonamとの併用効果
    出口 浩一, 横田 のぞみ, 古口 昌美, 中根 豊, 鈴木 由美子, 深山 成美, 石原 理加
    1992 年 45 巻 6 号 p. 605-611
    発行日: 1992/06/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Methicillin-resistant Staphylococcus aureus (MRSA) に対するCefuzonam (CZON) とMinocycline (MINO) の試験管内における抗菌併用効果を検討して, 以下の結論を得た。
    1. MINO感性及びMINO耐性MRSAに対する成績からは両薬剤の抗菌併用効果は, Cefotiam (CTM) +MINOの場合と同様に「MINOの抗菌活性依存的」であることが示唆された。
    2. FIcindexを含む両薬剤の抗菌併用効果はCTM+MINOにはやや劣るものの, MINOを接触させた後における経時的な殺菌効果は, CTM+MINOのそれと同等であった。
    3. MRSA感染症に対するCZON+MINOの併用療法は, グラム陰性菌の重感染などが想定される症例には有用性が高いものと考えられた。
  • 門田 利人, 近藤 博志, 近沢 弘隆, 黒柳 幸司, 石川 克己, 河野 茂生, 坂倉 佳代, 高橋 紀光, 舟橋 紀男, 清水 憲次, ...
    1992 年 45 巻 6 号 p. 612-619
    発行日: 1992/06/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    新規注射用セフェム系抗生物質塩酸セフェピム (以後, CFPMと略) の安全性評価の一環として, 雌雄Crj: CD (SD) ラットを用いて500, 1,000, 2,000mg/kgの3用量で静脈内持続投与及び皮下投与による単回投与毒性試験を, 又, 5~6ヵ月齢のビーグル犬を用いて1,000, 2,000mg/kgの2用量で静脈内持続投与による単回投与毒性試験を実施し, その毒性を検討した。なお, 各試験とも生理食塩液及びCFPM製剤中にpH調整剤として含まれているL-アルギニンの投与群を設定した。結果と結論は以下のとおりである。
    1. ラットへの静脈内持続投与では, 2,000mg/kg群で軽度な自発運動の抑制が認あられ, 本所見はL-アルギニン投与群の雄1例でもみられた。又, 1,000mg/kg及び/又は2,000mg/kg群並びにL-アルギニン投与群で軽度から重篤な投与部位の炎症性変化 (尾の脱落を含む) がみられた。体重は投与後順調に増加し, 観察期間中の平均体重に各用量群と生理食塩液投与群の間で差は認められなかった。
    2. ラットへの皮下投与では, 2,000mg/kg群の雄で軽度な自発運動の抑制が認められた。又, 500, 1,000mg/kg及び/又は2,000mg/kg群で軽度から中等度な投与部位の炎症性変化 (硬化, 脱毛, 痂皮形成, 壊死) がみられた。観察期間後半に2,000mg/kg群の雄で生理食塩液投与群と比較して平均体重のわずかな減少がみられたが, その他の用量群では差異は認められなかった。
    3. ラットを用いた試験のいずれの投与経路においても, 観察期間中に死亡例はなかった。2週間観察期間終了後の剖検において, 投与部位の炎症性変化以外に本薬投与に起因する他の異常所見は認められなかった。
    4. イヌへの静脈内持続投与では, 1,000mg/kg及び2,000mg/kg群並びにL-アルギニン投与群で投与中から嘔吐, 潮紅, 顔面浮腫, 活動性低下がみられた。更に, 1,000mg/kg及び/又は2,000mg/kg群で頻呼吸, 腹臥, よろめき歩行, 持続性排尿, 刺激に対する反応性の低下, 口腔粘膜の退色, 流誕等が認められた。これらの症状はいずれも一過性であり, L一アルギニン投与群では投与終了後15分から1時間以内に, CFPM群では6時間以内に消失し, CFPM投与群で回復が遅れたが, 1,000mg/kgと2,000mg/kg群の問では差異は認められなかった。体重変動摂餌量, 病理学的検査では, 本薬投与に起因する異常所見は認められなかった。
    以上のように, ラットへのCFPMの静脈内持続投与による単回投与毒性は皮下投与によるそれと類似して弱く, いずれの投与経路においても致死量は2,000mg/kg以上と考えられた。イヌへの静脈内持続投与においても, 2,000mg/kgで特に重篤な毒性作用はみられず, 致死量は2,000mg/kg以上と考えられた。
  • 門田 利人, 近藤 博志, 近沢 弘隆, 河野 茂生, 黒柳 幸司, 服部 則道, 平岩 映子, 坂倉 佳代, 河村 寿, 甲斐 修一, 石 ...
    1992 年 45 巻 6 号 p. 620-641
    発行日: 1992/06/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    新規注射用セフェム系抗生物質塩酸セフェピム (以後, CFPMと略) の安全性評価の一環として, 雌雄Crj: CD (SD) ラットを用いて150,500, 1,500mg/kg/日の3用量で1ヵ月間反復皮ド投与毒性試験を実施した。同時に生理食塩液及びCFPM製剤中にpH調整剤として含まれているL-アルギニンの投与群 (以下, 生理食塩液対照群, 溶媒対照群と略) を設定し, 比較・検討した。投与に際しては, 1日投与量の半量を約5時間間隔で1日2回投与した。又, 生理食塩液対照群と1,500mg/kg/日群には休薬群を設け, 投与期間終了後の回復性を検討した。結果と結論は以-ドのとおりである。
    1. 投与・観察期間中にいずれの投与群でも死亡例はなく, 500mg/kg群の雌及び1,500mg/kg群の雌雄で脱毛, 痂皮形成が投与部位に認められたが, これ以外に一般状態に変化はみられなかった。
    2. 投与期間後期に, 1,500mg/kg群の雄で軽度な体重増加の抑制が認められた。
    3. 投与1週目に, 500mg/kg及び1,500mg/kg群の雄で摂餌量の軽度な減少がみられた。
    4. 投与期間巾, 主として1,500mg/kg群の雌雄で飲水量の軽度な増加がみられた。
    5. 血液学的検査においては, 1,500mg/kg群の雄でリンパ球百分率の軽度な減少及び分節核球百分率の軽度な増加がみられたが, いずれも投与部位の炎症性変化と関連するものと判断された。
    6. 血液化学的検査においては, 1,500mg/kg群の雌雄でGOT及びGPTの軽度な上昇が, 150,500mg/kg及び/又は1,500mg/kg群の雄で総蛋白, アルブミン, トリグリセリドの軽度な低ドがみられた。このうち総蛋白, アルブミンの低ドは投与部位の変化と関連するものと判断された。
    7. 尿検査においては, 溶媒対照群及び1,500mg/kg群で低pH値を示す動物の出現頻度が高かった。
    8. 投与期間終了時剖検において, 500mg/kg及び1,500mg/kg群の雌雄で投与部位に皮下出血を呈する動物の出現頻度が高かった。1,500mg/kg群の雌でみられた盲腸の肥大は抗生物質の腸内細菌叢に対する影響に基づく変化と考えられた。
    9. 投与期間終了時剖検において, 1,500mg/kg群の雌雄で腎臓の絶対及び/又は相対重量の軽度な増加がみられ, 1,500mg/kg群の雄で肝臓の絶対及び相対重量の軽度な減少がみられた。
    10. 病理組織学的検査において, 500mg/kg及び/又は1,500mg/kg群の雌雄で投与部位に観察された出血, 細胞浸潤, 痂皮形成, 線維化及び表皮の肥厚等の炎症性変化は本薬投与に起因するものと考えられた。但し, 同様の所見は溶媒対照群の雄にもみられた。又, 500mg/kg及び1,500mg/kg群の雌数例で, 盲腸の拡張が観察され, 本薬投与に起因する所見と考えられた。
    11. 亀顕的病理組織学的検査において, 1,500mg/kg群の肝臓, 腎臓で本薬投与に起因すると思われる異常所見はなかった。
    12. 上述の本薬投与に起因すると思われた異常所見は休薬期間終了時には正常範囲内に回復し, 可逆的変化と考えられた。
    以上のように, 体重増加抑制が1,500mg/kg群の雄で, GOT及びGPTの軽度な上昇が1,500mg/kg群の雌雄でみられたため, ラットにCFPMを1ヵ月間反復皮下投与した場合の無影響量は, 投与部位での局所刺激性変化を除外して, 500mg/kg/日と推定された。
    塩酸セフェピムはブリストル・マイヤーズスクイブ株式会社研究所において創製された新規な注射用セフェム系抗生物質であり, 7位側鎖にα-Methoxyimino-aminothiazole基が導入され, 3位のN-Methylpyrrolidinium基と2位のCarboxy1基との間で分子内塩をつくるベタイン構造により特にグラム陰性桿菌に対する抗菌活性が増強され, 又, マウスを用いた感染治療実験においてもその効果が確認されている量)。
    今回, 本薬の安全性評価の一環として, ラットを用いて1カ月間の反復皮下投与による毒性を検討したので, その結果について報告する。
  • 甲斐 修一, 河村 寿, 石川 克己, 河野 茂生, 酒井 篤子, 黒柳 幸司, 門田 利人, 高橋 紀光
    1992 年 45 巻 6 号 p. 642-660
    発行日: 1992/06/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    セフェム系抗生物質塩酸セフェピム (CFPM) を150,500mg/kg/日及び1,000mg/kg/日及び対照薬としてL-アルギニンを724mg/kg/日の割合でCrl: CD (SD) ラットに, 雄では63日間, 雌では14日間, 1日分の投与量を2等分して午前と午後の2回連日皮下投与した後, 投与を継続しながら雌雄を同居させ, 妊娠の成立した各群半数の雌には更に妊娠0日目から妊娠19日目まで, 又, 残り半数の雌には妊娠0日目から分娩後21日目まで投与を続け, 概略次の結果を得た。
    1. CFPM1,000mg/kgの投与によりF0雌雄ラット全例に投与開始後1週にわたり軟便, 又, 雄7例, 雌12例に投与部位の脱毛がみられた。
    2. CFPM 1,000mg/kgのF0雄ラットで投与28日目から63日目に体重の増加抑制が認められ, 更にCFPM各投与群のF0雌ラットで投与第1週に摂餌量の減少がみられた。
    3. F0雌雄ラットの生殖能に対するCFPMの影響はみられなかった。
    4. CFPM 1,000mg/kgの投与によりF0雌雄ラットの腎重量の増加, 雄ラットで副腎重量の増加がみられた。一方, CFPM投与群の雌ラットで盲腸が肥大したが, この変化はラットでは一般的に抗生物質の投与でしばしば観察され, 腸内細菌叢の変化により起り, 可逆的変化とされているため, CFPMに特異的な変化とは考えられなかつた。
    5. 妊娠F0ラットから得られた胎児 (F1) に対するCFPMの影響はみられなかった。
    6. 母獣 (F0) の出産状況及び新生児 (F1) の生存率に対するCFPMの影響はみられなかつた。
    7. F1ラットの分化の状況, 行動発達, 学習能力, 記憶, 運動能力, 運動性及び情動性に及ぼすCFPMの影響はみられなかった。
    8. F1ラットの体重及び摂餌量に及ぼすCFPMの影響はみられなかった。
    9. 雌雄F1ラットの器官重量に対するCFPM投与の影響はみられなかった。
    10. F1ラットの生殖能及び出産状況に対するCFPMの影響はみられなかった。
    11. 妊娠F1ラットから得られた新生児 (F2) の生存率, 体重及び器官重量に対するCFPMの影響はみられなかった。
    以上の結果, 生殖及び発達に関する指標から判断して, 本試験におけるCFPMの親動物 (F0) 及び次世代 (F1) に対する無影響量は1,000mg/kg/日と考えられた。
  • 後藤 新, 天野 学, 酒井 篤了, 原 美奈子, 高橋 紀光
    1992 年 45 巻 6 号 p. 661-680
    発行日: 1992/06/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    新規注射用セフェム系抗生物質Cefepime (CFPM) 及びその代謝物であるN-Methylpyrrolidine-N-oxide (NMP-N-oxide) の一般薬理作用について検討し, 以下の結果を得た。
    1. CFPMは最高用量において, マウスの自発運動量を減少させ, 誘発催眠時間を延長し, 又, 体温の低下及び鎮痛作用を示した。その他, マウス及びラットの一般症状, 中枢神経系及びウサギの自発脳波活性に対する作用を有しなかった。
    2. CFPMはマウスにおいて筋弛緩作用を示さなかった。
    3. CFPMはモルモットから摘出した小腸平滑筋に対する直接作用を示さず, 各種収縮薬に対する拮抗作用も有しなかった。
    4. CFPMは麻酔下のウサギにおいて, 呼吸運動の増加, 血圧下降, 心拍数の減少を惹起し, 心電図においてはR振幅の増加, R-R間隔の延長を示したが, 血流量に対しては著明な作用を有しなかった。これらの変化は主にCFPM製剤中にpH調整剤として含有されるL-Arginineの影響と考えられた。
    5. CFPMはマウスの腸管内輸送能, ラットの胃液分泌に影響を及ぼさなかった。
    6. CFPMはラットの尿量及び尿中への電解質排泄を一時的に減少させたが, これらの変化はL-Arginineの影響と考えられた。
    7. CFPMは100mg/mlでウサギの全血凝固時間の延長傾向を示したが, この作用はLArginineによるものと考えられた。その他, ラットのカルシウムイオン再加凝固時間及びプロトロンビン時間や赤血球抵抗性に対しては影響を及ぼさなかった。
    8. CFPMの代謝物であるNMP-N-oxideは, 循環器系に対しわずかな作用を示しただけで, その他の系には著明な影響を及ぼさなかった。
    従つて, CFPMは臨床使用に際して重篤な有害反応に結び付くような薬理学的性質は, ほとんど有しないと考えられる。
  • 滝沢 茂夫, 柳瀬 賢次, 橋爪 一光, 笠松 紀雄, 立花 昭生, 荻須 信夫, 岡澤 光芝
    1992 年 45 巻 6 号 p. 681-686
    発行日: 1992/06/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    入院を要すると考えられた70歳以上の高齢者呼吸器感染症に対してCeftriaxone (CTRX) 1日1回29の点滴静注をし, その有用性, 安全性を検討し, 併せて血中濃度を測定し, 以下の成績を得た。
    1. 70歳以上の入院を要した呼吸器感染症48例に対するCTRXの臨床的検討では有効以上が89.6%であった。
    2. 副作用は発疹が7例14.6%にみられた。
    3. 4例にCTRX2g点滴静注後血中濃度を測定, One-compartment modelにより解析をした。高齢者においてCTRXの蓄積性は認あなかった。
  • 杉山 治夫, 堀内 篤, 長谷川 廣文, 木谷 照夫, 田川 進一, 正岡 徹, 手島 博文, 米沢 毅, 武 弘典, 川越 裕也, 平田 ...
    1992 年 45 巻 6 号 p. 687-696
    発行日: 1992/06/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    造血器疾患に併発した重症感染症150例を対象にMeropenem (MEPM) を投与し, 臨床効果と安全性について検討した。
    1. 有効性評価症例132例での臨床効果は著効33例, 有効45例, やや有効10例, 無効44例で, 有効率59.1%であった。
    2. 先行抗菌剤治療を受けていない症例での有効率は62.9%であったのに対し, 受けていた症例での有効率は51.2%であった。
    3. MEPM投与前後の末梢好中球数と臨床効果の検討において, 投与後の好中球数が増加する症例では有効率が高い傾向がみられた。投与後の好中球数が100/mm3以下の症例での有効率は48.1% (13例/27例) であった。
    4. 安全性評価症例150例中, 副作用は発疹3例, 黄疸1例の合計4例 (2.7%) にみられたが, いずれも投与中止後消失した。臨床検査値異常例は8例 (5.3%) にみられたが, いずれも重篤なものではなかった。
    以上から, MEPMは造血器疾患に合併する重症感染症に対し優れた有用性を有することが確認された。
  • 藤井 良知, 吉岡 一, 藤田 晃三, 丸山 静男, 坂田 宏, 印鍮 史衛, 千葉 俊三, 堤 裕幸, 我妻 義則, 福島 直樹, 石川 ...
    1992 年 45 巻 6 号 p. 697-717
    発行日: 1992/06/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    新規に開発されたカルバペネム系抗生物質Meropenem (SM-7338, MEPM) の小児科領域における基礎的・臨床的検討を目的とした研究会を組織し, 全国17基幹施設とその関連施設による協同研究を実施し, 以下の結果を得た。
    1. 血中濃度及び尿中排泄率
    53例の小児にMEPM1回10, 20mg/kg及び40mg/kgを点滴静注し, 体内動態を検討した。
    1歳以上の50例における平均血中ピーク濃度はそれぞれ28.5, 47.2μg/mI 及び130.0μg/ml, 半減期は0.80, 0.93時間及び0.94時間であつた。乳児 (1歳未満) では少数例での検討であったが, 大きな差はみられなかった。
    尿中排泄率は投与後6時間までに54.4~68.1%が回収された。
    2. 髄液中濃度
    化膿性髄膜炎症例に対し1回量29~44mg/kgを投与した場合病日4口以内では0.64~4.22μg/mlの髄液中濃度を示した。
    3. 臨床成績
    総症例は412例であり, 除外・脱落を除いた386例に2疾患合併の3例をそれぞれの疾患, に加えた389例が臨床効果判定解析症例となった。
    臨床効果は原因菌の判明したA群248例で著効175例, 有効67例, 有効率97.6%, 原因菌不明のB群141例で著効75例, 有効59例, 有効率95.0%と優れていた。A群とB群を合せた疾患別臨床効果は, 化膿性髄膜炎100% (11例/11例), 敗血症85.7% (6例/7例), 肺炎98.8% (171例/173例), 尿路感染症100% (65例/65例) 等であった。細菌学的効果は起炎菌と判明された269株巾260株, 96.7%に除菌効果が得られた。グラム陽性菌ではstaphylococcusaums37株で89.2%, streptococcuspneumoniae35株で100%等, 合計93株で消失率94.6%を示した。又, グラム陰性菌ではHaemophilusinfluenzae73株で98.6%, Pseudomonasaeruginosa11株で90.9%, Branhamellacatarrhalis15株, Escherichiacoli42株, Klebsiellapneumoniae6株はすべて消失し, 合計172株で98.3%の消失率であった。
    先行抗生物質3日以上投与で無効例84例では著効49例, 有効28例, 有効率91.7%と優れていた。細菌学的には46株中44株, 95.7%が除菌された。
    4. 副作用及び臨床検査値異常
    安全性に対する検討は, 総投与例412例から併用薬違反, 投与口数不足等の9例を除いた403例について検討した。
    副作用は下痢, 発疹, 水様便, 軟便が5例, 1.2%に認められた。臨床検査値異常はGOT, GPTL昇, 好酸球増多等58例に認められ, 投与終了後改善する一過性の変化に過ぎなかったが, その発現頻度が約14%とやや高いことから今後観察の必要があると考えられた。
    以上の成績から, MEPMは小児科領域においても成人同様有効であり, 安全性も高く特に重症感染症に対しては第1選択薬になり得るものと評価された。
  • 藤田 晃三, 室野 晃一, 西條 政幸, 吉岡 一, 丸山 静男, 坂田 宏, 印鎗 史衛
    1992 年 45 巻 6 号 p. 718-726
    発行日: 1992/06/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    小児感染症患者にMeropenemを投与し, その臨床効果と副作用, 薬物動態及び糞便内菌叢に与える影響を検討した。
    臨床投与成績と副作用の検討は生後1ヵ月から9歳の45症例について行つた。薬剤は3例に1回量27.6~45.5mg/kgを1日3, 4回投与した以外は, 1回量20mg/kg前後を1日3回, 30分かけて点滴静注した。投与期間は2~24.5日間, 総投与量は0.9~48gであった。本剤の適応と考えられた肺炎15例, 猩紅熱2例, 咽頭炎5例, 頸部リンパ腺炎3例, 蜂窩織炎3例, 尿路感染症10例, その他4例の合計42例に対する投与成績は, 著効29, 有効12, やや有効1であった。3例は本剤の適応がなかったと判断されたが, これらの例を含めた副作用は検査成績で肝機能検査異常5例, 好酸球増多2例, 好中球減少1例であり, 臨床的に明らかな副作用は認めなかった。
    薬物動態では, 血漿中濃度は6例, 尿中濃度は4例で検討した。1回20mg/kg投与した4例の30分点滴静注終了時の血漿中濃度は平均29.28±10.29μg/ml, 点滴静注終了後3時間のそれは0.49±0.26μg/mlであり, 半減期は0.66±0.12時間であつた。2例での投与開始後6時間までの尿中回収率は53%と40%であった。1回35mg/kg, 44mg/kg投与した2例では, 20mg/kg投与例より高い血漿中濃度が得られ, 半減期は0.5時間と0.62時間であった。又, 6時間後までの尿中回収率は共に約70%であった。1回量435mg/kg, 1日3, 4回投与したPartiallytreated meningitis例と, 1回量45.5mg/kg, 1日4回投与したウイルス性髄膜脳炎例の2例では髄液中濃度を測定した。治療開始後5日目投与後2.8時間, 投与開始後11日目投与後2時間に採取された髄液で, 共に0.37μg/mlであった。
    本剤投与中の糞便内菌叢では, 生後1ヵ月の1例では腸内グラム陰性桿菌やビフィズス菌が検出限界以下であったが, ほかの生後2ヵ月から3歳の6例では腸内グラム陰性桿菌は減少したもののビフィズス菌数は比較的保たれていた。
  • 堤 裕幸, 千葉 俊三
    1992 年 45 巻 6 号 p. 727-733
    発行日: 1992/06/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Meropenem (MEPM) について小児科領域感染症患者を対象に吸収・排泄及び臨床効果を検討した。
    1. 血清中濃度は投与終了直後に最高に達し, 平均38.4μg/ml, 6時間には1μg/ml以下となり, 消失の半減期 (β 相) は1.26時間であつた。尿中排泄のピークは0~2時間にあり, 6時間の累積排泄率は65.6%であった。
    2. 対象とした14例の臨床効果は著効4例, 有効9例, 判定不能1例 (後にマイコプラズマ肺炎と認められた症例) であった。原因菌の消長が8例において検討できた。内訳はStaphylococcus aureus4例のうち3例消失, 1例減少, Staphylecoccus epidermidis2例が消失, Pseudomonas aeruginosa, Citrobacter freundiiそれぞれ1例が消失であった。
    3. 副作用症状は認めなかったが, GOT・GPTの軽度で可逆的上昇を2例に認あた。
  • 福島 直樹, 石川 丹, 高瀬 愛子, 我妻 義則
    1992 年 45 巻 6 号 p. 734-737
    発行日: 1992/06/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Meropenemを試用し, 次の成績を得た。小児の重症感染症に有用な薬剤であると考えられる。
    1. 入院患児13例に24~75mg/kg/日を投与した。肺炎5例中, 1例に著効, 2例に有効, 細菌性髄膜炎1例中1例に有効, 急性咽頭炎2例中2例に著効, 皮膚軟部組織感染症4例中2例に著効, 1例に有効であった。1例は除外例で, 本剤の有効率は75%であった。
    起炎菌別臨床効果はStaphylococcus aureus6例中著効2例, 有効1例, やや有効2例, 1例除外例であった。Haemophilus influenzae1例著効, Xanthomonas maltOphilia1例有効, Pseudomonas aeruginosa1例やや有効であった。
    2. 副作用は認あなかった。又, 臨床検査値の異常も認あなかった。
  • 三国 健一, 松田 博雄, 渡辺 言夫
    1992 年 45 巻 6 号 p. 738-743
    発行日: 1992/06/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    新しく開発された注射用Carbapenem系抗生物質Meropenem (SM-7338, MEPM) を用い, 2ヵ月から8歳8ヵ月までの小児感染症13例を対象に臨床的検討を行つた。疾患の内訳は気道感染症7例, 敗血症1例, 眼窩蜂巣織炎2例, 耳下腺膿瘍1例, リンパ節炎1例, 皮膚感染症1例であった。臨床効果は著効7例, 有効4例, 無効1例, 判定不能1例で84.6%の有効率であった。細菌学的効果は投与前分離された7株中本剤投与により5株 (71.4%) が消失, 菌交代1株であった。臨床検査値では1例に好酸球増多, 1例に貧血が認められたが, 本剤に起因すると思われるその他の副作用は認められなかった。
    以上から, MEPMは中等症~重症の小児細菌感染症に対し有用な薬剤と考えられた。
  • 秋田 博伸, 佐藤 吉壮, 岩田 敏, 新田 靖子, 横田 隆夫, 砂川 慶介
    1992 年 45 巻 6 号 p. 744-755
    発行日: 1992/06/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    新たに開発されたMeropenem (MEPM, SM-7338) の小児科領域における臨床的検討を行い以ドの結果を得た。
    臨床分離株24株では, Staphylococcus aureusを含むグラム陽性球菌, グラム陰性桿菌であるEscherichia coli, Klebsiela pneumoniae, Entnbacter cloacaeに対する抗菌力は優れていた。中でもE.coli, Bnanhamella catarrhalisに対する抗菌力は優れていた。又, Haemophlus influenzaeはPiperacillin, Cefoperazoneより劣つていたがImipenem, Flomoxefより優れていた。細菌学的検討でもS.aureus1例を除いて検出された24例中23例が消失し, 消失率の合計は95.8%で優秀な結果であった。
    臨床的検討では蜂窩織炎1例が無効であつたが, 扁桃腺炎1例, 肺炎17例/17例 (100%), 尿路感染症12例/12例 (100%), ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群1例も有効で合計31例/32例, 有効率は96.9%であった。
    副作用は35例について検討し1例も認めなかった。臨床検査値異常はGOT値上昇4例/35例 (11.4%), GPT値上昇4例/35例 (11.4%), 好酸球増多4例/35例 (11.4%), 好中球減少2例/35例 (5.7%) とやや高率であつたが, 本剤中止後速やかに正常化した。
    止血機構に及ぼす影響について検討したが, 本剤投与前後でPIVKA IIが1.昇する例を認めたが, APTT, TT, HPT, Fbgなどの凝固系検査への影響は認めなかった。
    以Lから, 本剤は1回投与量, 10~20mg/kgを1日3同点滴静注すれば, 小児科領域における感染に対して有効であり, 安全な薬剤であると考えられた。
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