The Japanese Journal of Antibiotics
Online ISSN : 2186-5477
Print ISSN : 0368-2781
ISSN-L : 0368-2781
血液疾患に合併した重症感染症に対するImipenem/Cilastatin sodiumの臨床的検討
藤井 康彦井上 康広重 幸雄加来 浩平兼子 俊男
著者情報
ジャーナル フリー

1993 年 46 巻 3 号 p. 259-268

詳細
抄録

主として造血器悪性腫瘍を基礎疾患に持っ重症感染症で先行抗生剤が無効であった症例を中心として30例に対しImipenem/Cilastatin sodium (IPM/CS, チエナム®) による治療を行い, 臨床効果及び副作用について検討した。
1. 臨床効果は著効6例, 有効10例, やや有効10例, 無効2例, 不明2例で, 有効率は57.1%であった。
2. 単独投与例では有効率は33% (1例/3例)で, 併用例では有効率は60% (15例/25例) であった。
3. 先行剤が無効例での有効率は53.8% (14例/26例) で, 初めからIPM/CSを投与した2例では100%であった。
4. 投与開始時の好中球数が100/mm3以下の群, 好中球数101~500/mm3の群, 好中球数1,001/mm3以上の群で有効率に有意の差を認めなかった。IPM開始前の好中球数が100/mm3以下の症例中, 投与終了時までに好中球が101/mm3以上に増加した症例のほうが有効率が高い傾向がみられた。
5. 細菌学的効果としては効果判定対象28症例中20症例において合計23株の菌が分離同定され, 消失率は65.2% (15株/23株) であった。
6. 血中濃度を2例において測定した。血中半減期はCreatinine clearance低下例で延長した。
7. 副作用としては2例に悪心嘔吐を認め投与を中止した。1例に痙攀を認めたが, 因果関係は不明であった。又, 軽度の肝障害を2例に, 腎障害を1例に認めた。他の症例では臨床上特に問題とすべき副作用はみられなかった。
血液疾患に伴う重症感染症において, IPM/CSは先行剤無効例に対しても臨床的効果が高く, 安全性も高いことから, 有用な抗生剤であると考えられた。

著者関連情報
© 公益財団法人 日本感染症医薬品協会
前の記事 次の記事
feedback
Top