The Japanese Journal of Antibiotics
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小児科領域におけるCefozopranの基礎的, 臨床的研究
戒能 幸一貴田 嘉一松田 博
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1994 年 47 巻 11 号 p. 1565-1575

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抄録

小児科領域におけるCefozopran (CZOP) の血中濃度, 尿中排泄ならびに有効性と安全性を検討し, 以下の結果が得られた。
1. CZOPの血中濃度は, 20mg/kg, 40mg/kg静注投与後30分ないし1時間 (初回採血) で最高値が得られ, 静注投与後6時問では20mg/kgで1.6μg/ml (HPLC), 1.9μg/ml (Bioassay), 40mg/kgで2.9~9.1μg/ml (HPLC), 2.9~8.4μg/ml (Bioassay) であった。血中半減期は, 1.58~2.27時間 (HPLC), 1.53~1.85時間 (Bioassay) であった。CZOP 20mg/kg静注投与後8時間までの尿中回収率は61.5% (HPLC), 54.6% (Bioassay) であり, 投与後6~8時間の尿中濃度は157.3μg/ml (HPLC), 129.7μg/ml (Bioassay) であった。
2. 呼吸器感染症16例, 尿路感染症2例, 急性腸炎2例, 皮膚軟部組織感染症1例, 化膿性リンパ節炎1例に対するCZOPの臨床効果は, 著効が68%, 有効が32%で全例有効であった。
3. 細菌学的効果では菌消失率は100% (9株/9株) であった。
4. 臨床分離菌 (Staphylococcus aureus, Methicillin-resistant Staphylococcus aureus (MRSA), Streptococcus pneumoniae, Escherichia coli, Moraxella (Branhamella) catarrhalis) のMICを他の注射用セフェム剤 (Ceftazidime (CAZ), Cefuzonam (CZON), Flomoxef (FMOX), Cefmetazole (CMZ)) と比較すると, グラム陽性菌のS. aureus, MRSA, S. pneumoniaeではCZONとほぼ同じ低い値で, CAZより明らかに低値であった。グラム陰性菌のE. coliでは他の抗生剤と同様の低い値を示し, M.(B.) catarrhalisではCAZ, FMOX, CMZより高い値であったが, その値は1.56μg/mlであった。
5. CZOPの副作用としては22例中1例に下痢が認あられ, 臨床検査値の異常として好酸球増多が2例 (9.1%), 好中球減少が1例 (4.5%), 血小板数増加が1例(4.5%), GPT上昇が3例(13.6%) に認められた。しかし, これらはいずれも軽症のものであり, 臨床上問題になるものではなかった。
以上の結果から, CZOPは種々の細菌感染症に対して高い有効性と安全性を有しており, 小児科領域の細菌感染症の第1選択抗生剤になり得ると考えられた。

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