注射用新セフェム系抗菌剤であるCefozopran (CZOP, SCE-2787) を小児感染症例に投与し, 臨床分離株に対する抗菌力, 体内動態, 有効性及び安全性について検討した。
1. 薬剤感受性試験
CZOP投与症例から分離された計19株を対象として, Cefmetazole, Ceftazidime, Cefuzonam, Flomoxefの4剤とCZOPの計5薬剤についてMICを測定した。CZOPに対するMICはグラム陽性球菌でStaphylococcus aureus (3株) 0.39~0.78μg/ml, Streptococcus pneumoniae (5株) 0.05~6.25μg/ml, Enterococcus faecalis (1株) 12.5μg/mlと従来のセフェム剤と同等以上で, 特にE.faecalisに対する抗菌力は対照薬剤に優っていた。グラム陰性桿菌ではCitrobacter freundii (1株) 25μg/ml, Pseudomonas aeruginosa (1株) 6.25μg/mlで従来のセフェム剤と同等以上の抗菌力を有し, Haemophilus influenzae (7株) 0.1~0.39μg/mlであったが, Serratia marcescens (1株) は対照薬剤同様>100μg/mlであった。
2. 体内動態
CZOPの20mg/kg及び40mg/kgをワンショット静注し, 血清中濃度, 尿中濃度及び髄液中濃度をBioassay法にて測定した。投与後30分の血清中濃度は20mg/kg投与の1例で60.4μg/ml, 40mg/kg投与の2例はそれぞれ93.9, 99.0μg/mlであった。半減期は20mg/kg投与例が1.55時間, 40mg/kg投与例がそれぞれ1.10, 3.41時間であった。AUCは20mg/kg投与例が1365μg・hr/ml, 40mg/kg投与例がそれぞれ194.4, 264.5μg・hr/mlであった。投与後8時間までの尿中累積回収率は20mg/kg投与例で45.0%, 40mg/kg投与例ではそれぞれ84.6, 97.6%であった。髄液中濃度は化膿性髄膜炎の3例で測定され, 投与後1時間で2.6~16.0μg/ml, 髄液/血清中濃度比は6.5~39.0%であった。
High-performance liquid chromatography法でも類似の成績が得られた。
3. 臨床成績
臨床効果判定は48例が可能で, そのうち3歳未満の症例が75%で男児がやや多かった.大多数の症例がCZOPの1回約20mg/kgを1日3回投与され, 投与期間は6~10日と1週間前後が多かった。臨床効果は化膿性髄膜炎2例を含む48例中46例が有効以上で有効率は95.8%であった。疾患別には咽喉頭炎1例, 副鼻腔炎3例, 化膿性髄膜炎2例, 尿路感染症7例, 膿痂疹1例, ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群3例, 蜂窩織炎2例では全例有効以上で, 肺炎での有効率は96.2% (25/26), 化膿性リンパ節炎は3例中2例が有効であった。細菌学的効果は起炎菌あるいは起炎菌と推定される細菌が18例から22株分離され, グラム陽性球菌のS. aureus 1株, Staphylococcus epidermidis 1株, S. pneumoniae 5株, E. faecalis 1株はいずれも消失した。Enterococcus faeciumの1株は減少であった。グラム陰性桿菌ではH. influenzae 9株中8株が消失し, 1株は不変, C. freundii 1株, Proteus penneri 1株, P. aeruginosa 1株はいずれも消失したが, S. marcescens 1株は不変であった。全体では22株中19株 (86.4%) が消失した。副作用は安全性採用例58例中1例に無形軟便がみられた。臨床検査値異常は好酸球増多1例, 血小板増多1例, GOT上昇2例がみられた。これらの症状・所見は軽~中等度のもので, 処置を必要とするものはなかった。
以上の基礎的・臨床的成績より, CZOPは小児科領域感染症に有用な薬剤と考えられた。
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