The Japanese Journal of Antibiotics
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[14C] 標識T-3761のラットおよびマウスにおける吸収, 分布, 代謝および排泄
早川 大善林 清範酒井 広志石倉 礼美高木 宏育中島 良文十亀 祥久
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1995 年 48 巻 5 号 p. 671-685

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抄録

ラットおよびマウスにおける [14C] T-37615mg/kgを経口投与および静脈内投与し, 吸収, 分布, 排泄および代謝について検討した結果, 以下の知見を得た。
1. 経口投与した場合速やかに吸収され, ラットでは投与後15分, マウスでは投与後10分に最高血中濃度に達し, 以後速やかに消失した。
2. ラット, マウスとも主排泄経路は尿中であり, ラットでは約84%, マウスでは約74%が尿中に排泄され, 残りは糞中に排泄された。尿中排泄率は両種とも経口投与, 静脈内投与でほぼ等しく, 吸収は良好であった。
3. 尿中代謝物はラットでは90%以上が未変化体であったが, マウスでは約57%がグルクロン酸抱合体であった。
4. ラットでの胆汁中排泄率は約22%であり, その約83~87%はグルクロン酸抱合体であった。また胆汁中に排泄された放射能の約41%は, 小腸から再吸収された。
5. 臓器・組織内濃度は, 胃, 小腸を除く臓器・組織の中で腎臓, 肝臓が最も高かった。また, 血漿中濃度以下で広く全身の臓器・組織に分布した。しかし, 脳, 脊髄への移行は少なかった。
6. 正常ラットに投与した場合, 全身オートラジオグラフィーにより放射能は, 脳, 脊髄以外の全身に広く分布していることが認められた。
7. [14C] T-3761のラットおよびマウス血清蛋白に対するin vitro結合率は, 23~31%, 25~34%であった。
T-3761は, 富山化学工業株式会社で合成された新規なニューキノロン系抗菌剤であり, グラム陽性菌およびPseudomonas aeruginosaを含むグラム陰性菌に対して幅広い抗菌スペクトルを持つことが明らかにされている1)。T-3761の各種実験動物における生体内動態を明らかにすることは, 臨床における有効性および安全性の予測をするために重要なことである。今回我々は, [14C] T-3761を用いてラットおよびマウスにおける吸収, 分布, 排泄および代謝について検討したので, その結果を報告する。

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