The Japanese Journal of Antibiotics
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T-3761のラットにおける生殖・発生毒性試験
小前 憲久三善 隆広小崎 司大場 英子河村 泰仁児玉 卓也
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1995 年 48 巻 6 号 p. 832-860

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抄録

新しく開発されたニューキノロン系合成抗菌剤のT-3761について, S. D. 系ラットを用いて生殖・発生毒性試験を行い, 親動物, 胎児および出生児におよぼす影響を検討した。各試験において, T-3761の60,300, 1,500mg/kg/dayを経口投与した。
1. 妊娠前および妊娠初期投与試験
雄は6週齢から交配前9週間, 雌は13週齢から交配前2週間および妊娠7日まで投与した。親動物については, 1,500mg/kg群の雌雄で軽度軟便, 体重増加抑制, 摂水量の増加がみられた。盲腸重量の増加が雄では300mg/kg以上の群で, 雌では1,500mg/kg群でみられた。親動物の生殖能力にはT-3761投与の影響はみられなかった。胎児については, 1,500mg/kg群で軽度の骨化遅延がみられた以外, 異常はみられなかった。親動物に対する一般毒性学的無影響量は300mg/kg, 生殖に関する無影響量は1,500mg/kg以上, 胎児に対する無影響量は300mg/kgと考えられた。
2. 胎児の器官形成期投与試験
妊娠7日から妊娠17日まで投与した。母体については, 1,500mg/kg群で軽度軟便, 摂餌量の一過性の減少, 摂水量の増加, 軽度の体重増加抑制, 盲腸重量の増加がみられた。胎児については, 1,500mg/kg群で心室中隔欠損の発現率の軽度上昇および軽度の骨化遅延がみられた。出生児にはT-3761投与の影響はみられなかった。母体に対する一般毒性学的無影響量は300mg/kg, 生殖に関する無影響量は1,500mg/kg以上, 次世代の発生に関する無影響量は300mg/kgと考えられた。
3. 周産期および授乳期投与試験
妊娠17日から分娩後21日まで投与した。母体については, 300mg/kg以上の群で盲腸重量の増加が, 1,500mg/kg群で軽度軟便, 摂餌量の一過性の減少, 摂水量の増加, 分娩後の一過性の体重増加抑制, 妊娠期間の軽度の延長がみられた。出生児にはT-3761投与の影響はみられなかった。母体に対する一般毒性学的無影響量および生殖に関する無影響量は300mg/kg, 次世代の発生に関する無影響量は1,500mg/kg以上と考えられた。

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