1997 年 50 巻 3 号 p. 272-297
新しい経口用マクロライド系抗菌薬Azithromycin(AZM)の10%細粒剤及び100mgカプセル剤を小児の種々の感染症患者に投与し, 臨床分離株に対する抗菌力, 体内動態, 有効性及び安全性について検討したところ, 次のような成績が得られた。
1.臨床分離株に対する抗菌力は, AZM投与症例から分離された8菌種57株に対し, AZMとClarithromycin (CAM), Erythromycin (EM)の3薬剤を共通して用い, 接種菌量106cfu/mlにおけるMICを測定した。AZMに対するMICはグラム陽性球菌で Staphylococcus aureus (20株) 0.78~100μg/ml, Streptococcus pyogenes (11株) 0.05~0.1μg/ml, Streptococcus pneumoniae (10株) 0.0125~3.13μg/mlであり, S. aureusとS. pneumoniaeのMICに幅がみられたが, 従来のマクロライド系抗菌薬とほぼ同等であった。グラム陰性桿菌ではMoraxella subgenus Branhamella catarrhalis (1株) 0.05μg/ml, Haemophilus influenzae (9株) 0.78~3.13μg/ml, Haemophilus parainfluenzae (1株) 0.78μg/ml, Salmonella sp.(1株) 6.25μg/mlであり, 従来のマクロライド系抗菌薬よりもグラム陰性菌に対する抗菌力が増強されていることが示唆された。Mycoplasma pneumoniae (4株) では3株が≤0.0008μg/mlで, 1株のみ25μg/mlであった。AZMのM. pneumoniaeに対するMICは同時に測定したCAM, EMよりも全株低いMIC値であった。
2.血漿中濃度を細粒剤5例, カプセル剤4例について検討した。AZM 10.0~16.3mg/kgを3~4日間経口投与した時の最終投与2時間後の血漿中濃度は細粒剤では0.02~0.19μg/ml, カプセル剤では 0.11~0.42μg/mlであった。
3.尿中濃度は細粒剤4例, カプセル剤4例で検討され, 細粒剤, カプセル剤ともに投与開始120時間後においても3μg/ml以上のAZMが検出された。累積尿中排泄率の算出が可能であったカプセル剤3例では, 投与開始から120時間後までに総投与量の4.69~10.17%が尿中から排泄された。
4.臨床効果は, 細粒剤では19疾患128例中, 著効51例, 有効63例, やや有効8例, 無効6例, カプセル剤では5疾患23例中, 著効13例, 有効10例であった。有効率は, 細粒剤が 89.1%, カプセル剤が100%であった。
5.細菌学的効果は細粒剤では8菌種54株中45株(83.3%)が消失, カプセル剤では6菌種10株中9株(90.0%)が消失した。
6.副作用は細粒剤において, 発疹1例, 嘔吐1例, 下痢5例, 軟便1例の計8例が認められた。カプセル剤では1例にじん麻疹と嘔吐が認められた。
7.臨床検査値の異常変動は, 細粒剤において白血球数の減少3例, 好酸球数の増多7例, GOT及びGPTの上昇2例, GPTの上昇1例の計13例, カプセル剤において白血球数の減少2例, 白血球数の減少及び好酸球数の増多1例, 好酸球数の増多3例の計6例に認められた。