The Japanese Journal of Antibiotics
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50 巻, 3 号
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  • その1. 感受性について
    熊本 悦明, 塚本 泰司, 広瀬 崇興, 横尾 彰文, 引地 功侃, 茂田 士郎, 高橋 年光, 白岩 康夫, 荻原 雅彦, 吉田 浩, 今 ...
    1997 年 50 巻 3 号 p. 219-250
    発行日: 1997/03/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    1995年6月から翌年5月までの間に全国11施設において,尿路感染症と診断された患者から分離された菌株を供試し, それらの各種抗菌薬に対する感受性を測定した。尿路感染症患者から分離された菌の内訳は, グラム陽性菌が29.8%であり, その約42%はEnterococcus faecalisが占めていた。グラム陰性菌は70.2%であり, 最も多く分離されたのがEscherichia coliであった。これらの菌に対する抗菌薬の効果をみるとE. faecalisに対してはAmpicillin (ABPC), Imipe-nem (IPM) の抗菌力が最も強く, ついでVancomycin (VCM), Piperacillin (PIPC) の順であった。Staphylococcus amusに対して最も強い抗菌力を示したのはVCMで,ついでArbekacin (ABK), Minocycline (MINO) が良好であったが,他の薬剤の抗菌力は弱かった。これらの3薬剤はMRSAに対しても同等の抗菌力を示した。Staphylococcus epidermidisに対する抗菌力はABKが最も強く, ついでMINOが良好であった。94年度に成績の良かったセフェム系薬剤のMIC90は, 94年度の2~16μg/mlに対し95年度は8~128μg/mlであった。Streptococcus aga-lactiaeに対してはGentamicin (GM)を除きいずれの薬剤も優れた抗菌力を示し, MICが4μg/ml以上を示す菌株はほとんどみられなかった。Citrobacter freundiiに対する抗菌力はIPMが最も強く, ついでGMが強かった。Enterobacter cloacaeに対してもIPMの抗菌力が最も強く1μg/mlですべての菌株の発育を阻止したが, その他の薬剤ではMINOとTosufioxacin (TFLX) を除き抗菌力は弱かった。特にペニシリン系, セフェム系薬剤の抗菌力は弱く, ほとんどの薬剤のMIC90は256μg/ml以上であった。E. coliに対しては, ペニシリン系薬剤を除くほとんどの薬剤が良好な抗菌力を示した。Klebsiella pneumoniaeに対してもペニシリン系薬剤を除き優れた抗菌力を示した。特にCarumonam (CRMN)の抗菌力が最も強く,0.125μg/ml以下で53株すべての発育を阻止した。K. pneumoniaeに対する抗菌力を94年度の成績と比較すると, いずれの薬剤でも95年度の成績が良好であった。Proteus mirabilisに対する抗菌力はABPCとMINOを除き全般的に良好であり, また94年度にキノロン系薬剤でみられた耐性株(MIC≥256μg/ml)もみられなかった。Pseudomonas aeruginosaに対する抗菌力は全般的に弱く, 最も強かったIPMでもMIC90の値は8μg/mlであった。Serratia marcescensに対しても全般的に抗菌力は弱く, MIC90でみるとIPMが2μg/ml, CRMNが8μg/mlを示した以外は, すべて16μg/ml以上であった。
  • その2. 患者背景
    熊本 悦明, 塚本 泰司, 広瀬 崇興, 横尾 彰文, 引地 功侃, 茂田 士郎, 高橋 年光, 白岩 康夫, 荻原 雅彦, 吉田 浩, 今 ...
    1997 年 50 巻 3 号 p. 251-264
    発行日: 1997/03/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    1995年6月から翌年5月までの間に全国11施設において尿路感染症と診断された患者から分離された菌株を供試し, それらの患者背景について性別・年齢別と感染症, 年齢別感染症別菌分離頻度, 感染症と菌種抗菌薬投与時期別の菌と感染症, 因子・手術の有無別の菌と感染症などにつき検討した。
    年齢と性及び感染症の関連についてみると, 男女とも50歳以上の症例が多く, 全体の74.2%を占めた。男性では50歳以上の症例の割合は女性よりも高く80.5%を占め, その80%以上が複雑性尿路感染症であった。女性では69.7%を50歳以上の症例が占めるが, 20歳代の症例も12.6%と比較的多かった。感染症については60歳未満では, 単純性尿路感染症が過半数を占めるが, 60歳以上では複雑性尿路感染症が過半数を占めた。年齢や感染症別の分離菌をみると, 単純性尿路感染症で最も多く分離されたのはEscherichia coliで48.5%を占めたが,感染症が複雑になるにつれ減少し,カテーテル留置複雑性尿路感染症では6.0%しか分離されなかった。これと逆の傾向にあったのがPseudomonas aeruginosa, Enterococcus faecalis, Staphylococcus aureusなどであった。年齢別では多少の違いはあるものの, 明らかな傾向は認められなかった。薬剤投与前後における感染症別の菌分離頻度をみると, 単純性尿路感染症では, 投与前はE. coliが最も多く分離され53.6%を占めたが,投与後では12.1%に減少し, 代わってE. faecalisが最も多く分離され18.2%を占めた。カテーテル非留置複雑性尿路感染症でも, 投与前はE. coliが最も多く分離され22.0%を占めたが, 投与後はP. aeruginosa, E. faecalisが多く分離され, それぞれ16.9%, 13.3%を占めた。カテーテル留置複雑性尿路感染症ではE. faecalis, Proteus spp., E. coliなどは投与前の方が分離頻度は高く, P. aeruginosa, S. aureusは投与後の分離頻度の方が高かった。分離菌を因子・手術の有無別, 感染症別にみるといずれの感染症においてもE. coliは無の方で多く分離され,逆にE. faecalisは有の方で多く分離される傾向にあった。
  • 目黒 英典, 寺島 周
    1997 年 50 巻 3 号 p. 265-271
    発行日: 1997/03/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    36例の各種小児感染症に対してAzithromycin (AZM) の細粒剤およびカプセル剤を使用し, 臨床的評価を行った。
    Haemophilus influenzae, Moraxella catarrhalis による肺炎, マイコプラズマ肺炎, 気管支炎, 咽頭炎, 扁桃炎, 猩紅熱, 百日咳およびカンピロバクター腸炎など36例に対する有効率は94.3%であった。細菌学的効果は起炎菌が分離され, その消長が確認された12例全例が消失であった。
    細粒剤1回10.0mg/kgを1日1回, 3日間投与した2例の最終投与後24~72時間の血漿中半減期はそれぞれ41.5, 51.4時間であり, 血漿中濃度-時間曲線下面積 (AUC0~∞) はそれぞれ7.45, 13.44μg・hr/mlであった。また, 尿中濃度を測定した2例の初回投与後から81時間までの累積尿中排泄率はそれぞれ6.27%, 11.0%であった。
    副作用および臨床検査値の異常変動はともに1例も認められなかった。
    以上の成績から, AZMは小児科領域感染症の治療に有用な抗生物質であると考えられる。
  • 本廣 孝, 長井 健祐, 山田 秀二, 津村 直幹, 山田 孝, 織田 慶子, 阪田 保隆, 加藤 裕久, 今井 昌一, 佐々木 宏和, 森 ...
    1997 年 50 巻 3 号 p. 272-297
    発行日: 1997/03/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    新しい経口用マクロライド系抗菌薬Azithromycin(AZM)の10%細粒剤及び100mgカプセル剤を小児の種々の感染症患者に投与し, 臨床分離株に対する抗菌力, 体内動態, 有効性及び安全性について検討したところ, 次のような成績が得られた。
    1.臨床分離株に対する抗菌力は, AZM投与症例から分離された8菌種57株に対し, AZMとClarithromycin (CAM), Erythromycin (EM)の3薬剤を共通して用い, 接種菌量106cfu/mlにおけるMICを測定した。AZMに対するMICはグラム陽性球菌で Staphylococcus aureus (20株) 0.78~100μg/ml, Streptococcus pyogenes (11株) 0.05~0.1μg/ml, Streptococcus pneumoniae (10株) 0.0125~3.13μg/mlであり, S. aureusとS. pneumoniaeのMICに幅がみられたが, 従来のマクロライド系抗菌薬とほぼ同等であった。グラム陰性桿菌ではMoraxella subgenus Branhamella catarrhalis (1株) 0.05μg/ml, Haemophilus influenzae (9株) 0.78~3.13μg/ml, Haemophilus parainfluenzae (1株) 0.78μg/ml, Salmonella sp.(1株) 6.25μg/mlであり, 従来のマクロライド系抗菌薬よりもグラム陰性菌に対する抗菌力が増強されていることが示唆された。Mycoplasma pneumoniae (4株) では3株が≤0.0008μg/mlで, 1株のみ25μg/mlであった。AZMのM. pneumoniaeに対するMICは同時に測定したCAM, EMよりも全株低いMIC値であった。
    2.血漿中濃度を細粒剤5例, カプセル剤4例について検討した。AZM 10.0~16.3mg/kgを3~4日間経口投与した時の最終投与2時間後の血漿中濃度は細粒剤では0.02~0.19μg/ml, カプセル剤では 0.11~0.42μg/mlであった。
    3.尿中濃度は細粒剤4例, カプセル剤4例で検討され, 細粒剤, カプセル剤ともに投与開始120時間後においても3μg/ml以上のAZMが検出された。累積尿中排泄率の算出が可能であったカプセル剤3例では, 投与開始から120時間後までに総投与量の4.69~10.17%が尿中から排泄された。
    4.臨床効果は, 細粒剤では19疾患128例中, 著効51例, 有効63例, やや有効8例, 無効6例, カプセル剤では5疾患23例中, 著効13例, 有効10例であった。有効率は, 細粒剤が 89.1%, カプセル剤が100%であった。
    5.細菌学的効果は細粒剤では8菌種54株中45株(83.3%)が消失, カプセル剤では6菌種10株中9株(90.0%)が消失した。
    6.副作用は細粒剤において, 発疹1例, 嘔吐1例, 下痢5例, 軟便1例の計8例が認められた。カプセル剤では1例にじん麻疹と嘔吐が認められた。
    7.臨床検査値の異常変動は, 細粒剤において白血球数の減少3例, 好酸球数の増多7例, GOT及びGPTの上昇2例, GPTの上昇1例の計13例, カプセル剤において白血球数の減少2例, 白血球数の減少及び好酸球数の増多1例, 好酸球数の増多3例の計6例に認められた。
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