The Japanese Journal of Antibiotics
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腸管出血性大腸菌の薬剤感受性と抗菌剤投与について
堺市での集団食中毒から
森口 直彦八木 和郎山本 隆吉岡 加寿夫久保 修一
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1997 年 50 巻 7 号 p. 591-596

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抄録

1996年7月, 堺市で小学校児童を中心に, 5,000人を超える腸管出血性大腸菌O157による急性出血性大腸炎の集団発生が見られた。これらの患者の便から検出された腸管出血性大腸菌に対する抗菌剤のin vitroでの抗菌力を測定した結果では, norfloxacinは最も強い抗菌活性を示し, fosfomycin, kanamycin, ampicillin, cefaclorも強い抗菌力を示した。しかし, doxycyclineにはやや高いMICを示しており, 今後, この菌の耐性株の出現には, 注意が必要と考えられた。
当院を受診した出血性大腸炎または保菌者に対して, 私達は, 初期の抗菌剤投与を原則として加療を行った。95名の出血性大腸炎または保菌者に対してfosfomycinの経口投与を行った結果では, hemolytic uremic syndrome(HUS)の合併は1例もみられなかった。一方, HUSまたはHUS疑いとして紹介され, 当院で加療を行った17名について腸炎の初期に使われた抗菌剤の種類を検討した結果では, fosfomycinの静注が多く行われていた。以上から, 出血性大腸炎に対しては, 消化管内で十分な濃度を得るためにも, 有効な抗菌剤の経口投与の必要性がうかがわれた。

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