2000 年 53 巻 3 号 p. 171-178
我々はMethicillin-resistant Staphylococcus aureus (MRSA) に対する各種抗菌薬のMICの測定, ならびに併用効果の評価を行った。
MRSAを分離した37例の約65%においては, 他の菌も同時に分離されていた。同時に分離された菌としてはCandida属, Enterococcus属, Pseudomonas aeruginosaが多かった。
微量液体希釈法によりMICを測定した結果, MRSAに対するarbekacin, vancomycin (VCM), teicoplaninのMICは, それぞれ≤0.25-4.0, 0.5-1.0, ≤0.25-4.0μg/mlの範囲に分布し, 耐性株は見られなかったことから, この3剤のMRSA感染症に対する有用性は高いと考えられた。
併用効果の実験の結果, 高い相乗効果率が得られたのはVCMとflomoxef (FMOX)(相乗効果率=97.3%), またはVCMとimipenem (IPM) との組み合わせ (相乗効果率=97.2%) であったが, 後者の方がFractional inhibitory concentration indexが小さかった。また, MRSAを分離する症例では同時にP. aeruginosaやEnterococcus属が分離され易いことを考慮すると, P. aeruginosaにはFMOXは無効であるが, IPMは有効であるため, 特にVCMとIPMとの併用が有用性が高いと思われた。