The Japanese Journal of Antibiotics
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呼吸器感染症患者分離菌の薬剤感受性について (2001年)
島田 馨猪狩 淳小栗 豊子池本 秀雄森 健中野 邦夫横内 弘寺井 継男山本 真井上 洋西中舘 俊英諏訪部 章小畑 律子大野 勲岡田 信司林 克敏荒川 正昭下条 文武五十嵐 謙一岡田 正彦青木 信樹北村 亘子鈴木 康稔柄沢 安雄中田 紘一郎中谷 龍王稲川 裕子工藤 宏一郎小林 信之木下 忠雄此崎 寿美小林 宏行後藤 元河合 伸伊藤 章住友 みどり松島 敏春二木 芳人菅 守隆戸坂 雅一河野 茂朝野 和典宮崎 義継平潟 洋一青木 志保松田 淳一那須 勝永井 寛之平松 和史中野 忠男
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2003 年 56 巻 5 号 p. 365-395

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抄録

2001年10月~2002年9月の問に全国16施設において, 下気道感染症患者370例から採取された検体を対象とし, 分離菌の各種抗菌薬に対する感受性および患者背景などを検討した。これらの検体 (主として喀痰) から分離され, 起炎菌と推定された細菌458株のうち456株について薬剤感受性を測定した。分離菌の内訳はStaphylococcus aureus 69株, Streptococcus pneumoniae 72株, Haemophilus influenzae 85株, 非ムコイド型Pseudomonas aeruginosa 44株, ムコイド型P. aeruginosa 13株, Klebsiella pneumoniae 32株, Moraxella subgenus Branhamella catarrhalis 32株などであった。
S. aureus 69株のうちOxacillinのMICが4μg/mL以上の株 (Methicillin-resistant S. aureus: MRSA) は43.5% (30/69) を占めた。MRSAに対してVancomycinとArbekacinは最も強い抗菌力を示し, 2000年と同様に良好な抗菌力が認められた。S. pneumoniaeのなかで, ペニシリンに低感受性を示す株 (Penicillin-intermediate resistant S. pneumoniae: PISP+Penicillin resistant S. pneumoniae: PRSP) の分離頻度は59.7%で, PISPおよびPRSP共に1992年以降, 最も高い分離頻度であった。S. pneumoniaeに対する抗菌力はカルバペネム系薬剤が強く, 特にPanipenemは0.125μg/mLで, Imipenemは0.5μg/mLで全72株の発育を阻止した。H. influenzaeに対する抗菌力は全般的に強く, いずれの薬剤もMIC90は16μg/mL以下であった。H. influenzaeに対して最も強い抗菌力を示した薬剤はLevofloxacinで, 0.063μg/mLで85株中80株 (94.1%) の発育を阻止した。ムコイド型P. aeruginosaに対してはMeropenem (MIC90: 0.5μg/mL) が, 非ムコイド型P. aeruginosaに対してはTobramycin (MIC90: 2μg/mL) が最も強い抗菌力を示した。K. pneumoniaeに対しては, AmpicillinおよびMinocyclineを除く各薬剤のMIC90が4μg/mL以下であったが, なかでもCefmenoxime, Cefpirome, Imipenemの抗菌力が最も強く (MIC90: 0.125μg/mL), 次いでCefbzopranが強く, 0.25μg/mLで全32株の発育を阻止した。M.(B.) catarrhalisに対する抗菌力も全般的に強く, いずれの薬剤もMIC90は4μg/mL以下であった。最も強かった薬剤はMinocyclineおよびLevofloxacinであり, 0.063μg/mLで全32株の発育を阻止した。
呼吸器感染症患者の年齢は, 70歳以上が全体の40.5%を占めた。疾患別では細菌性肺炎および慢性気管支炎の頻度が高く, それぞれ39.2, 37.3%であった。細菌性肺炎患者から多く分離された菌はS. aureus (19.3%) およびS. pneumoniae (19.9%) であった。一方, 慢性気管支炎患者からはH. influenzae (22.0%) が多く分離された。抗菌薬投与前の症例で, 呼吸器感染症患者から多く分離された菌は, S. pneumoniaeおよびH. influenzaeで, その分離頻度はそれぞれ20.8%および21.5%であった。S. pneumoniaeおよびH. influenzaeは, 抗菌薬投与開始後症例での頻度は低かったが, S. aureusは高かった。P. aeruginosaは抗菌薬投与前症例よりも投与開始後症例で分離頻度が高かった。検体採取時に既にセフェム系薬剤が投与されていた症例からは, S. aureusおよびP. aeruginosaが最も多く分離され, マクロライド系薬剤が投与されていた症例からはS. pneumoniaeが, キノロン系薬剤の投与症例からは, S. aureusが最も多く分離された。

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