2005 年 58 巻 3 号 p. 290-302
2003年5月から8月の4か月間に, 岐阜県内の医療機関から分離されたインフルエンザ菌330株の薬剤耐性状況について検討した。インフルエンザ菌は, PCR法によりP6蛋白遺伝子の検出とXV因子要求性の両者を満たした株とし, ampicillin (ABPC) 耐性遺伝子の検索はPCRにより実施した。菌株の輸送・保存中に死滅した17株を除き, 検討した313株は, 遺伝子解析に基づくPCRの結果から, 解析された耐性遺伝子のいずれをも有しない株: 感性菌 (BLNAS) 85株, TEM-1型β-lactamase産生菌 (BLPAR) 6株, β-lactamaseを産生せず, ftsi上に, Lys-526変異のみを有する軽度耐性菌 (Low-BLNAR) 77株, β-lactamseを産生せず, Lys-526変異とSSN周囲に3個のアミノ酸変異を有する耐性菌 (BLNAR) 138株, β-lactamase産生で声si上にもLys-526変異を有する菌 (BLPACR-1: β-lactamase-producing and amoxicillin/clavulanic acid resistance) 3株, β-lactamase産生でBLNARのfitsI遺伝子変異を有する耐性菌 (BLPACR-II) 4株に分類された。経口セフェム系薬の抗菌力は, それぞれの抗菌薬で大きく異なっていたが, MIC50およびMIC90は, cefditorenでは, それぞれ0.06μg/mLと0.25μg/mLでもっとも優れ, cefteramでは, 0.125μg/mLと1μg/mL, cefcapeneでは, 0.5μg/mLと4μg/mLであった。また, 松原耳鼻いんこう科医院において分離されたインフルエンザ菌30株の血清型は, type bが66.7%を占めていた。岐阜県内でもインフルエンザ菌の薬剤耐性化状況には, 肺炎球菌と同様に, 地域間で微妙に違いがあるため, 今後も定期的なサーベイランス結果に基づいた地域のアンチバイオグラムを作成していくことは, より適確な化学療法を行ううえで, 極めて有用であると考えられた。また, 分離されたインフルエンザ菌の血清型タイプbの割合が高かったことから, 臨床現場における早期のワクチンの導入も望まれる。