2006 年 59 巻 5 号 p. 364-372
最近では, pharmacokinetics (薬物動態) /pharmacodynamics (薬力学)(PK/PD) 理論に基づいた抗菌薬の投与方法が推奨されているが, その臨床成績は少ない。経口フルオロキノロン系抗菌薬のひとつであるガチフロキサシン (gatifloxacin: GFLX) について, PK/PD理論に基づいた至適投与方法を検討するために, 骨盤内炎症性疾患 (pelvic inflammatory disease: PID) を対象として, GFLX 400mg/日を, 分2または分4投与した場合の臨床効果および有害事象の発現状況について検討した。抗菌化学療法により, 白血球数およびCRP値は, 分2投与群が, 分4投与群と比較して, 有意に減少した。血中濃度を測定し得た4症例では, 推定原因菌に対するAUCIMICが142.28と280.16 (いずれも推定原因菌はEscherichiacoli) の症例は投与方法にかかわらず有効であったが, 推定原因菌に対するAUCIMICが4.10 (推定原因菌Prevotella bivia) と4.35 (推定原因菌Pseudomonas aeruginosa) の症例では無効であった。今回の検討から, PKIPDを考慮することで有効な抗菌薬の投与方法を選択できることが示唆された。