2007 年 60 巻 6 号 p. 344-377
Meropenem (MEPM) をはじめとするカルバペネム系薬を中心に, 全国の医療機関30施設より収集した2006年の臨床分離株2838株 (グラム陽性菌876株, グラム陰性菌1764株, 嫌気性菌198株) に対する最小発育阻止濃度 (MIC) を測定し, 以下の結果を得た。
1.MEPMのMIC90は, 腸内細菌科, Haemophilus influenzaeにおいて他のカルバペネム系薬に比較して殆どが2-5管低値であり, 特にグラム陰性菌全般に対し良好な抗菌力を示した。また, グラム陽性菌・嫌気性菌に対しても, MEPMは, methicillin-resistantStaphylococcus aureus等の一部の多剤耐性株を除く殆ど全ての臨床分離株に良好な抗菌力を示した。
2.Pseudomonas aeruginosaにおけるMEPM耐性株に対してimipenem (IPM) は全株耐性を示したのに対し, IPM耐性株に対するMEPMの交差耐性率は41.8%であった。また, ciprofloxacin (CPFX) 耐性株に対するMEPMの交差耐性率も33.3%と低値であった。
3.基質拡張型β-ラクタマーゼ (ESBL) 産生株が, Escherichia coliで6株 (4.3%), Citrobacter freundiiで1株 (1.1%), Citrobacter koseriで5株 (21.7%), Klebsiella pneumoniaeで4株 (3.1%), Enterobacter cloacaeで3株 (3.3%), Serratia marcescensで1株 (0.8%), Providencia spp.で2株 (4.9%) 認められた。また, メタロ-β-ラクタマーゼ産生株は, P.aeruginosaで10株 (3.1%) 認められた。
4.過去の成績に比較して, MEPMのMIC90が2管以上上昇した菌種は認められず, MEPMに対する感受性に顕著な耐性化を認めなかった。
以上より, MEPMは上市後11年以上を経過した時点においても, 広域かつ強力な抗菌力を維持しており, 依然として臨床的に有用性の高いカルバペネム系薬であるとの結論を得た。