カルバペネム系抗菌薬はβ-ラクタム系抗菌薬の中で最もブロードスペクトルかつ強い抗菌力を持ち重症感染症のエンピリックセラピーに用いられることが多く, PK/PD解析による投与法についての研究は耐性菌出現予防の観点からも重要であると考えられる。そこで2004年, 2006年に慶応義塾大学病院において入院患者血液より分離された
Pseudomonas aeruginosa に対するmeropenem (MEPM), biapenem (BIPM) およびdoripenem (DRPM) のMIC分布を使い, PK/PD理論に基づいて, それぞれの薬剤の本邦における1日最大投与量内での効果的な投与法について検討を行った。
2004年に慶応義塾大学病院の患者血液より分離された
P.aeruginosaに対するMIC分布をもとにtime above the MIC (%T>MIC) に対する予測達成率を求めた結果, CRAIGらにより提唱されているカルバペネム系抗菌薬で殺菌的効果が期待できるとされるターゲット40%T≥MICに対して最も予測達成率が高くなったのは30分点滴 (traditional infusion: TI) においては, MEPMでは500mg1日4回投与で90.89%, BIPMでは300mg1日4回投与で83.25%, DRPMでは250mg1日4回投与で81.73%であった。3時間点滴 (prolonged infusion: PI) においてはMEPMでは500mg1日4回投与で100%, BIPMでは300mg1日3回投与で83.97%, DRPMでは250mg1日3回投与で99.98%であった。
2006年に慶応義塾大学病院の患者血液より分離された
P. aeruginosa に対するMIC分布をもとに予測達成率を求めターゲットを40%T≥MICとした場合, 最も予測達成率が高くなったのはTIにおいては, MEPMで500mg1日4回投与で80.57%, BIPMでは300mg1日4回投与で56.70%, DRPMでは500mg1日4回投与で69.44%であった。PIにおいてはMEPMで500mg1日4回投与で89.35%, BIPMでは300mg1日4回投与で60.84%, DRPMでは500mg1日3回投与で82.78%であった。また, 持続点滴については2004年, 2006年いずれの分布を用いた場合もMEPM, BIPM, DRPMすべてにおいてターゲットCss/MIC≥1に対する予測達成率は3時間点滴分割投与とした場合の40%T≥MICに対する予測達成率を下回る結果となり, 3剤において最も有効な投与方法はいずれも3時間点滴による分割投与であると考えられた。
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