抄録
兎輸精管は左右相接して膀胱の基底部に進み, 次で尿道の背部に沿って両膨大部に移り, その先端はこの膨大部の背側に位する嚢状の無対の精嚢の遠位部に開口する. また精嚢の先端は尿道に開く. 前立腺は精嚢の更に背方に位し, その遠位部は Cowper 氏腺の近くまで伸びている. 尚輸精管膨大部, 精嚢, 前立腺, Cowper 氏腺等は夫々甚だ特有な構成を示す.
兎の広義に於ける尿道は次の4部に分けられる. 精嚢の尿道への開口部までの近位部を膨大精嚢部, 前立腺のみに取危かれる部を前立腺部, Cowper 氏腺と横紋筋性の尿道筋とに附随される部を尿道筋部, そして陰茎体の中を走る部を尿道海綿体部と名付けたい. この中の海綿体部の名は陰茎体の根部に於いて特に適合する. 何故ならここでは典型的尿道海綿体の形成を見るが, 陰茎体中央部から亀頭の先端部に至る迄はかかる海綿体の代りに数条の可成り太い静脈の走るを見るに過ぎないからである.
尿道は一般に粘膜ヒダに恵まれ, 上皮は近位部では移行上皮であるが, その他は概ね2列性円柱上皮, そして最先端部の舟状窩に相当して拡大した腔所有の部では重層扁平上皮で, これは亀頭の粘膜性の薄い重層扁平上皮に移行する. また尿道の固有膜は一般に巾広く, 中に甚だ多くの微細な縦走性平滑筋小束を含む. 陰茎海綿体の構成は他動物の場合よりも寧ろ人の場合に類似するが, その先端が亀頭先端部にまで突入する事は他動物に於けると異ならない.