Archivum histologicum japonicum
Print ISSN : 0004-0681
フグ血管嚢の電子顕微鏡的観察
村上 正浩吉田 豊茂
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1967 年 28 巻 3 号 p. 265-284

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抄録

冠細胞は 細胞基底部から上部突出部に至る広い胞体領域を, 管状または嚢状の滑面小胞体の網工で占められている. 上部突出部からは血管嚢腔に向かって放射線状に さじ状の王冠が出ているが, この突出部の辺縁部には直径500Åの明瞭な限界膜に包まれた電子密度の高い顆粒が散在している. 王冠と上部突出部を結ぶ茎は繊毛から構成されており, 繊毛は中空の円筒状で中心部のフィラメントを欠いている. 王冠は多数の空胞や小管で占められており, これらの空胞や小管は直径400Åの小顆粒で充たされている. 時にこれらの空胞や小管が血管嚢腔に開いている像が見られる. この王冠で特徴的なことは, 空胞, 小管および細胞膜等のすべての膜系統が, いずれも厚さおよそ300Åの雲絮状を呈する薄い層で その胞体に面した側を縁どられていることである. この層の組織化学的成分と冠細胞との機能の関係が考察された.
血管嚢の間質組織には時として無髄神経線維の終末が認められる. この終末に2種類あり, 1つは豊富な小空胞と いわゆる カテコラミン顆粒を含んでおり, 1つは前者よりも一般に径が小さく, ごく小数の空胞とグリコゲン粒子をもつだけで, カテコラミン顆粒は含んでいない. しかしこの両者が同一の神経線維の異なった断端を示しているに過ぎないのか, あるいは機能的にも異なっているのかは明らかではない.
冠細胞は基底側では直接毛細血管の基底膜に接することはなく, 渡辺 (1966) がアカエイで明らかにしたように, 支持細胞の突起で両者はたがいに隔てられている.

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© 国際組織細胞学会
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