Archivum histologicum japonicum
Print ISSN : 0004-0681
28 巻, 3 号
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  • 原 智次
    1967 年 28 巻 3 号 p. 227-246
    発行日: 1967年
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    イヌの心臓剌激伝導系を用い, 形態学的ならびに組織化学的観察を行ない, 次の所見を得た.
    1. 洞房結節は一般心房筋線維より細く, 枝分かれの多い, 筋原線維のとぼしい, 筋形質の豊富な特殊心筋線維の網工から形成されている. 筋線維網の間隙には結合組織線維が混入しているが, 結節は 周囲の一般心房筋とは結合組織で境されていない. 一般心房筋との間に移行像が認められるが, 房室結節との間を結ぶ特殊心筋からなる径路は 認められない.
    2. 房室結節は冠状静脈洞の開口部に近い後部と, 房室束に近い前部に分けられる. 後部の構造は洞房結節のそれに似ている. これら両部は明瞭な境界なく, 結節全体としては, 結節の後上部と房室束への移行部とを除けば, 完全に結合組織にとり囲まれ, 周囲の組織から分離されている. 結節の上後部で一般心房筋線維から結節筋線維への移行像が認められるほかは, 心房筋と結節との連絡はない.
    3. 房室束を構成する特殊心筋線維は一般心筋線維より太く, 分岐も少なく, 筋形質が豊富で, 筋原線維のとぼしい筋線維が平行に配列して構成されている. 房室束は右脚と左脚に分岐する.
    4. 右脚は肉眼的には三尖弁中隔尖の直下で心内膜下に出現し, 枝分かれしない太い1本の索として, 孤をえがきながら前乳頭筋の基部に至り, ここを拠点として次の3分枝群にわかれる. 1) 肺動脈円錐部に分布する枝. 2) 遊離壁に分布する枝. 3) 後乳頭筋の基部をはじめ, 広く中隔面に分布する枝.
    5. 左脚は 肉眼的には 大動脈弁の後半月弁と右半月弁の接合部の直下で 広い幅をもって心内膜面下に出現し, ただちに扇のように分枝する. 主体となるものは数本の仮腱索となって左心室腔をよぎり, 前および後乳頭筋の基部にいたり, 広く心内膜面下に網工を形成する. また一部は, 仮腱索を形成せず, 直接 中隔面に分布する.
    6. 網工のこまかさ, いいかえると枝分かれの密度は, 左右の心室とも遊離壁が最も大で, 中隔面では左心室側が右心室側よりも大である.
    7. 心臓剌激伝導系各部は, いずれも多量のグリコゲンを含んでおり, これらのグリコゲンは 一般心筋線維に含まれるものに比して はるかに難水溶性である.
  • 川端 潔
    1967 年 28 巻 3 号 p. 247-264
    発行日: 1967年
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    The basal clear cell in the gastric gland of the rat and mouse was studied by means of autoradiography after injection of H3-dihydroxyphenylalanine (H3-DOPA), H3-5-hydroxytryptophan (H3-HTP), H3-tyrosine, C14-5-hydroxytryptamine and H3-tryptophan. The results were as follows.
    1. After injection of H3-DOPA and H3-HTP, the characteristic strong radioactivity appeared in the basal clear cells as compared with the chief cells and parietal cells of the gastric glands.
    2. The radioactivity in the clear cells was higher on the nucleus than the cytoplasm up to 15 minutes after the intraperitoneal injection of H3-DOPA or up to 30 minutes after the subcutaneous injection of H3-DOPA in contrast with the other amino acids used.
    3. The radioactivity in the clear cells after the injection of H3-DOPA, decreased or vanished by the pretreatment, the simultaneous treatment and the posttreatment with α-methyldopa or reserpine.
    4. The basal clear cells revealed some differences among them in the ability of incorporation of the amino acids.
    6. Moderate radioactivity appeared on the argyrophile cells after the injection of H3-HTP.
    From the results mentioned above, it is supposed that the basal clear cells, showing different phases of activity, might be the main sites of amine synthesis in the rat stomach, and more active than the enterochromaffine cells.
  • 村上 正浩, 吉田 豊茂
    1967 年 28 巻 3 号 p. 265-284
    発行日: 1967年
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    冠細胞は 細胞基底部から上部突出部に至る広い胞体領域を, 管状または嚢状の滑面小胞体の網工で占められている. 上部突出部からは血管嚢腔に向かって放射線状に さじ状の王冠が出ているが, この突出部の辺縁部には直径500Åの明瞭な限界膜に包まれた電子密度の高い顆粒が散在している. 王冠と上部突出部を結ぶ茎は繊毛から構成されており, 繊毛は中空の円筒状で中心部のフィラメントを欠いている. 王冠は多数の空胞や小管で占められており, これらの空胞や小管は直径400Åの小顆粒で充たされている. 時にこれらの空胞や小管が血管嚢腔に開いている像が見られる. この王冠で特徴的なことは, 空胞, 小管および細胞膜等のすべての膜系統が, いずれも厚さおよそ300Åの雲絮状を呈する薄い層で その胞体に面した側を縁どられていることである. この層の組織化学的成分と冠細胞との機能の関係が考察された.
    血管嚢の間質組織には時として無髄神経線維の終末が認められる. この終末に2種類あり, 1つは豊富な小空胞と いわゆる カテコラミン顆粒を含んでおり, 1つは前者よりも一般に径が小さく, ごく小数の空胞とグリコゲン粒子をもつだけで, カテコラミン顆粒は含んでいない. しかしこの両者が同一の神経線維の異なった断端を示しているに過ぎないのか, あるいは機能的にも異なっているのかは明らかではない.
    冠細胞は基底側では直接毛細血管の基底膜に接することはなく, 渡辺 (1966) がアカエイで明らかにしたように, 支持細胞の突起で両者はたがいに隔てられている.
  • 柴崎 晋, 伊東 俊夫
    1967 年 28 巻 3 号 p. 285-312
    発行日: 1967年
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    この研究によって分泌部と導管の間に短い移行部があることが再確認された. 導管の2層立方上皮は表在細胞と基底細胞から成る. 表在細胞の高密度の殼皮層は, 表面と平行に密にならぶ張微原線維束と, その間を充たす微細顆粒状物質から成り, 管腔を囲む硬い輪をつくって管腔の閉鎖をふせぐ, 殼皮層から多数の短い乳頭状微絨毛が管腔へ出され, ミクロアポクリン分泌像を示すことがある. 殼皮層の中には管腔の微絨毛に接してあるのと同じ小滴と微粒子を含む小胞あるいは小空胞が多く出現し, 殼皮層の表面から下界まで分布し, 殼皮層に胞飲能があることを示唆する. このような超微構造はヒトのエ-汗腺導管にはNaやClのごとき汗の成分を再吸収し, 汗の濃度を調節する機能があるという説を支持する. 導管の表在細胞と基底細胞の細胞質には, かなり多くの糸粒体, 張微原線維束, 少数の粗面小胞体嚢, 多数の自由なライボゾーム, 滑面小胞と少数の多小胞体が証明される. 発達が悪くて小さいゴルジ複合体は層板と小胞から成り, 両細胞の核周囲部に見出される. 低密度のグリコゲン野は基底細胞のみに証明され, 核側部にある.
    移行部は単層立方上皮をもち, その下層に不連続性に扁平基底細胞がある. 管腔を囲む立方細胞は少数の微絨毛と細胞質突起をもつのみで, 殼皮層のごとき特殊層や, 導管上皮に見られるような著明な細胞間嵌合はない. 立方細胞の細胞質内には, とくに核を囲んで厚い核周囲微原線維層をつくる多量の張微原線維, 多数の球形および小杆状または糸状の糸粒体内顆粒をもつ少数の糸粒体, 核上部にあって著明な層板と多数の小胞から成る, よく発達した大きいゴルジ複合体, 時にゴルジ野の中に見出される双中心子, 少数の粗面小胞体嚢, 多数の自由なライボゾームおよび限界膜で包まれ, 縦走する細管状構造をもつ多数の本態不明の紡錘形あるいは杆状暗調小体が認められる. 最も重要な所見は, 立方細胞のとくに管腔側部および基底部と外側部に多数の滑面小胞が出現し, それが時に表面の形質膜と接触し, また しばしば管腔, 基底膜および細胞間腔へ開口することである. これらは旺盛な胞飲あるいは逆の胞飲の存在を暗示する. 管腔側部にある小胞は直径約100mμ, 基底部のものはやや小さく約77mμであって, 両者の間にゴルジ複合体が介在する. さらに管腔面から色々の深さの形質膜陥凹が細胞質内へ陥入し, その壁にも上記のごとき小胞を伴なう. これら超微構造から次の想定が成立する. 移行部の立方細胞は旺盛な胞飲能によってNaやClのごとき汗の成分を汗腺細胞の分泌物から再吸収し, 細胞内を通して結合組織または細胞間腔へ排出する. この過程にはゴルジ装置と糸粒体が関与し, 扁平基底細胞も補助的役割を演ずるであろう. かくして人のエ-汗腺細胞の分泌物は先ず短い移行部へ, 次いで長い導管迂曲部へ流入し, 漸次その上皮によって再吸収を受けるわけである.
  • 藤本 淳
    1967 年 28 巻 3 号 p. 313-335
    発行日: 1967年
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    ヒキガエル交感神経節の電子顕微鏡的観察の結果, 神経節細胞はニツスル小体の量的および形態的差により, いわゆる“明細胞”と“暗細胞”とに区別される.
    神経節細胞のゴルジ小胞はしばしば電子密な顆粒を内包する. その電子顕微鏡的形態は前シナップス末端にみられる抱顆粒小胞に酷似する.
    神経節に存在する顆粒細胞内の特殊顆粒は副腎髄質細胞のクロマフィン顆粒に形態的に類似する. 顆粒細胞はしばしば血管周辺に存在する.
    神経節内血管内皮細胞には電子密な特殊な顆粒を認めることがあり, その形態は顆粒細胞内のそれに類似する.
    これらの二つの所見は神経節内の顆粒細胞が副腎髄質細胞と同様, カテコールアミン分泌に関与していることを想像させる.
    節前剌戟された交感神経ニューロンにおいてシナップス小胞の結晶様集積がシナップス前膜に少し離れて観察された.
    このシナップス小胞の特徴的配列は, 連続頻回剌戟によって生ずるシナップス伝達遮断に関係あるものかもしれない.
  • 中井 康光, 藤田 尚男, 福重 満, 田中 広見
    1967 年 28 巻 3 号 p. 337-352
    発行日: 1967年
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    正常および下垂体摘出後5, 10, 20, 30日の雄ラットの曲精細管を光学顕微鏡と電子顕微鏡で観察し, かつ酸性フォスファターゼの局在を電子顕微鏡的に検べた.
    光顕では 術後5日ですでに精子細胞の大部分が変性過程にあり, 成熟精子はほとんど見られなかった. 術後30日では 各種細胞の数が減少し, 成熟精子は全く見られなかった. 電顕では 精祖細胞には比較的変化が少なく, 精子形成過程に著変が見られた. すなわち精子細胞は尖体形成の時期に, 滑面小胞体の拡大, ミトコンドリアおよびゴルジ装置の変形につぐ消失, 遊離リボゾームの減少, 細胞質内の不均質黒色物質の沈着, 核の変形および消失などをおこして変性し, セルトリ細胞に取り入れられる. セルトリ細胞内に存在する大小さまざまの, 黒色沈澱物と層板状の膜状構造をもった dense body は, 酸性フォスファターゼ反応が陽性で, セルトリ細胞によって処理されつつある変性精細胞 (phagosome) と考えられる. セルトリ細胞内には大きい脂肪滴が増加するが, これは処理された変性精細胞の最終産物と推測される.
    なお変性初期の精子細胞のゴルジ野も 酸性フォスファターゼ反応が陽性を呈した.
  • 1967 年 28 巻 3 号 p. 353-354
    発行日: 1967年
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
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