抄録
モルモットの肝を潅流固定後, 村上の改良タンニン酸-オスミウム法で処置し, アセトン乾燥, 無蒸着で走査型電子顕微鏡により観察し, 類洞壁の形態をしらべた.
類洞壁には内皮細胞の胞体を貫通する多数の丸い窓と, 内皮細胞相互間に存在する少数の窓がある. この窓は中心静脈近くの内皮細胞では直径0.5∼3.0μの大きなものが多数みとめられ, 小葉の辺縁に近づくにつれて小さく数少なくなり, 小葉辺縁帯では直径0.3μ以下の大きさであった. このほか内皮細胞の網状の稜柱のあいだの陥凹には多数の小孔が存在し, ふるいをつくっていた. また内皮細胞の核による隆起と稜柱には, 飲みこみ陥凹と思われる小孔を認めた.
小葉辺縁帯の類洞壁の一部に内皮細胞と明らかに区別され, 胞体は著明に洞内に突出し, ヒトデ状の突起をもつクップエル細胞と思われる細胞を認めた. この細胞には内皮細胞にみられたような窓は認められなかった.
大きい窓を通して, 内皮細胞直下に, 微絨毛をおおうように拡がるたこ足状の突起をもつ細胞が認められた. この細胞は伊東の脂肪摂取細胞と考えられた.
内皮細胞の窓の機能的意義, とくに小葉内の位置の差による意義を考案した.