Archivum histologicum japonicum
Print ISSN : 0004-0681
ラット切歯における成熟期エナメル芽細胞およびエナメル質表層に関する細胞化学的研究
高野 吉郎
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1979 年 42 巻 1 号 p. 11-32

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抄録

ラット切歯の成熟期エナメルとエナメル芽細胞, ならびにそれらの境介面に存在する膜様構造について, リンタングステン酸および過ヨウ素酸メテナミン銀による複合多糖体染色と, 各種消化実験とを組合わせて電顕細胞化学的に検索した.
ラット切歯エナメル形成の移行期には, エナメル表層に幅約0.1μmのリンタングステン酸強染帯が出現し, 成熟期に入るとすぐにエナメルとエナメル芽細胞間に, さらに一層のリンタングステン酸強染帯が出現した. 後者のウラン-鉛染色像は幅約80nmの電子密度の高い膜様構造を呈し, これと接するエナメル芽細胞の細胞膜には, 半接着斑がみられた. また同部の細胞質中には, リンタングステン酸強染性の小胞や桿状構造物が細胞膜に近接してみられ, 膜様構造の分泌を示唆した. 細胞質中に増加する大型顆粒には, 水解酵素活性を認めた. 過ヨウ素酸メテナミン銀法では, エナメル表層に一致して幅約0.1μmにわたる銀粒子の沈着がみられたが, 膜様構造には強い反応は認められなかった. 膜様構造のCr-PTA染色性は, ヒアルロニダーゼまたはノイラミニダーゼ消化により著しく低下したが, コラゲナーゼおよびトリプシン消化では膜様構造自体が消失した.
以上のことから, ラット切歯の成熟期エナメルとエナメル芽細胞間にみられる膜様構造は, いわゆるクチクラあるいは歯小皮と呼ばれるものとは異り, エナメル芽細胞由来の基底膜にほかならないことが明らかとなった. またこの基底膜が膠原性成分を有する可能性も示唆された.

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© 国際組織細胞学会
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