Archivum histologicum japonicum
Print ISSN : 0004-0681
成人に於ける余の所謂筆尖核, 円核並びに大細胞性及び小細胞性背核に就て
小松 誠
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1955 年 9 巻 3 号 p. 389-409

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抄録

瀬戸鍍銀法による延髄の研究に於て舌咽神経及び迷走神経の内臓運動神経核は夫々微細構造を多少異にする4個の核から成る. 第1は筆尖に相当して形成される余の所謂筆尖核, 第2は此核の略ぼ腹側を占める大細胞性背核, 第3は前記両核の外側を占める小細胞性背核, 第4は小細胞性背核の背部を占める余の所謂円核である. 大細胞性及び小細胞性背核は4核の中で最も強力に発達する. 或は夫々消化管の筋層及び腺系に関する副交感中枢を表わすに非ずやと想像される. 円核は筆尖核よりも弱い核で, 之等は夫々心臓と大動脈及び呼吸器特に肺に対する副交感中枢を表わすものであるかも分らない.
筆尖核は疎に配列するグリア線維網内に大核所有の小神経細胞と中等大のメラニン色素細胞を含む. 之等植物性細胞からの軸索突起は小束をなして専ら弓状に走り, 小細胞性背核を通過して孤束の植物線維に移行する.
大細胞性背核には多数の著明な多極性を示す大細胞と少量の小細胞とが見られ, 之等は形態的にも又神経原線維の性状からも躯幹運動細胞や知覚細胞から明かに区別され得る植物性細胞に属する. 軸索突起は弱い弓状を描いて小細胞性背核を通り孤束に進む. 尚お網様体からの植物線維が本核細胞に密接な関係を示し, 又反射作用に役立つと思われる太い知覚線維も極く少量乍ら本核内に発見される.
小細胞性背核はグリア組織内に疎に配列する小細胞によって構成され, 又上記3核からの軸索突起の孤束への通路に当る. 又本核細胞からの軸索突起も孤束内に進む.
円核は種々な方向特に輪状に走る微細線維束の錯綜の中に紡錐状或は棍棒状の中等大及び小型の植物細胞を疎に含む. 此細胞からの軸索突起も小細胞性背核を通って孤束の中に入る.

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© 国際組織細胞学会
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