抄録
デザインの自由度が高い電気自動車では、構造的に安定した固有の美しいかたちを研究する余地が大いにある。新しいボディフォルムを探求するデザインプロジェクトには 4 種類あり、それらは、当該自動車会社を象徴するような過去の傑出したモデルを大胆に再解釈するのか、それともゼロから新たなかたちを模索するのか、という軸と、将来の都市の在り方を踏まえるのか、踏まえないのか、という軸とで規定される。フォロワーになることを避けるならば、過去の優れたモデルを再解釈するプロジェクトとゼロから新たなかたちを模索するプロジェクトを同時に走らせて、かたちに関する刷新を常に図ることが自動車会社には求められる―ただし
自動車は、将来そうなりたい自分を示すべく自らのテイストが反映されたものであるので、刷新されたかたちは長寿命であることが求められる。つまり頻繁なモデルチェンジを行うというスタイリングの論理との決別が必要である。また自動車のデザインは、将来の都市の在り方と関連しており、イタリアの都市が演劇のための舞台(劇場空間)でもあることを踏まえると、未来の小型自動車は、即興的な演劇空間が街に出現した際には、おとぎの国の馬車のようなものとしてその演出に役立つものとなるだろう。さらに夜間照明を通じて日中とは違う雰囲気となった都市や、季節ごとに衣替えがなされた都市の雰囲気に応じてその色が変化する小型自動車なども考えられる。