日本心臓血管外科学会雑誌
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原著
JapanSCORE の有用性の検討—Logistic EuroSCORE との比較を含めて
梅原 伸大齊藤 聡津久井 宏行山崎 健二
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2013 年 42 巻 2 号 p. 94-102

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抄録
リスク解析モデルによる死亡率,合併症発生率の予測は臨床のさまざまな場面で用いられ,その重要性をましている.これまで,本邦でもlogistic EuroSCOREがリスク解析モデルとして多く使用されてきたが,実際の本邦における臨床実態やその成績とは乖離があると考えられている.JapanSCOREはJACVSD(日本成人心臓血管外科手術データベース)によるrisk解析モデルであり,その結果は,より日本の心臓血管外科臨床成績を反映していると考えられる.今回,logistic EuroSCORE(ES)とJapanSCORE(JS)を比較検討し,さらに当院での実際の成績を用いて予測精度を検討した.当院で2006年10月~2011年6月に施行した心臓血管外科手術のうちJACVSDでリスクモデルが確立している単独CABG,およびMaze術以外の合併手術のない弁置換または弁形成術,および胸部大動脈手術症例,計733例を対象とし,単独CABG群(CABG群)は151例,弁膜症手術(valve群)は346例,大血管手術(aorta群)は236例であった.これらの症例に対してEuroSCORE,JapanSCORE用いて予測手術死亡率を算出して比較検討するとともに,実際の成績を用いて,ROC(Receiver Operating Characteristic)曲線から算出されるAUC(Area under the ROC curve)を用いてその予測精度について検討した.全体でのESは平均5.99(0~15)点,logistic mortalityは平均7.28(0.88~53.03)%,JapanSCORE(JS)によるlogistic mortalityは平均4.05(0.2~84.6)%であった.AUCはESで0.740,JSで0.806であった.JSにおけるlogistic mortality and morbidityは平均17.72(3.1~87.9)%であり,AUCは0.646であった.CABG群ではESは平均4.81(0~15)点,logistic mortalityは平均5.7(0.88~53.03)%であった.JSによるlogistic mortalityは平均3.18(0.2~84.6)%で,AUCはESで0.636,JSで0.770であった.JSにおけるlogistic mortality and morbidityは平均13.37(3.2~83.6)%であり,AUCは0.631であった.Valve群ではESは平均5.67(1~12)点,logistic mortalityは6.00(1.51~30.51)%であった.JSにおけるlogistic mortalityは3.79(0.5~28.5)%であった.AUCはESで0.715,JSで0.794であった.JSにおけるlogistic mortality and morbidityは平均17.54(4.2~66.6)%で,AUCは0.606であった.Aorta群ではESは平均6.95(1~14)点,logistic mortalityは平均10.17(1.22~49.74)%であった.JSにおけるlogistic mortalityは4.99(0.8~43)%であった.AUCはESで0.720,JSで0.827であった.JSにおけるlogistic mortality and morbidityは平均20.83(4.65~87.8)%でAUCは0.640であった.全症例および術式別のそれぞれでJSはESに比較して低く算出された(p<0.001).ESとJSはともにその予測精度は良好であったが,JSのほうがより予測精度が高かった.当院での実際の成績とJSを比較することにより,当院の優良点,改良すべき点を明らかにすることができた.JSにおけるlogistic morbidityの予測精度はmortalityに比べ改善の余地はあるものの,JSはESと比較し,本邦における,心臓血管外科手術のリスク予測に有用なものであると考えられた.
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