物理教育通信
Online ISSN : 2433-4529
Print ISSN : 2423-8988
「自転車をこぐ」という力学~まさつ力、熱、仕事の関係
夏目 雄平
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2021 年 186 巻 p. 92-95

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抄録
自転車をこぐと前に進むエネルギーは人間が筋肉から発していることに異を唱える方はいないであろう。しかし、それが足の先→ペダル→チェーン→車軸→スポーク→タイヤ→地面-----と伝わってくる過程を力で表現するとなると極めて微妙な問題であって、今までも多くの論争があった。さらには、「力」と「その力によって動いた距離」の積が仕事になるという事情が事態を複雑にした。人間は機械的な部分には剛体概念を持ち込んで理想化したいという欲求があるため、かえって不自然になる。車輪と地面が一点で接するという奇妙な仮定となってパラドクスを生んでしまう。 ここでは、スポークの付いた車輪を粘弾性体とみなして、その収縮と反発を取り込む。必然的に車輪と地面の接点は複数(あるいは面)となる。そうすると人間の為していることは、結果的にその粘弾性に働くと言える。即ち筋肉の粘弾性が車輪の粘弾性を助けているというソフトマター科学からの統一的な見方になる。機械的な多くのプロセスはそれを効率良く機能させるための内的システムと言える。
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