2024 年 29 巻 2 号 p. 206-219
やせ(低体重)は身体的,精神的にさまざまな悪影響を及ぼし,疾患リスクも高いことが報告されているが,日本人の20歳代女性では20.7%が体格指数(body mass index, BMI)でやせに該当する.本研究では,我が国における若年やせ女性の食生活や健康・栄養リテラシーに関する特徴を抽出することを目的として論文レビューを行った.国内外のやせ女性が形成される要因に関する査読付き論文で,2022年5月16日までに発表されたものを対象とした.検索には,医学中央雑誌(医中誌,日本語論文)とPubMed,CINAHL,Web of Science,SCOPUS(英語論文)を用い,対象年齢は13歳以上(平均年齢が30歳未満の論文は採用)でやせの情報があることを採用基準としたスコーピングレビューを行い,最終的には日本語論文48件,英語論文69件の合計117件を採用した.すべての論文を地理区分で分類した結果,日本を含む東アジア地域の報告が最も多く,英語論文に限った場合でも25件(32.9%)が東アジアの報告であり,そのうち日本が10件,大韓民国(韓国)が9件であった.スコーピングレビューの結果,日本を含む東アジアでは,やせの要因として「ボディイメージ」の報告が最も多く,次が「行動要因」であった.その他の国では「環境要因」の報告が最も多く,次が「食事」であった.やせは東アジア,とくに日本と韓国で生じている問題であり,これらの国でのやせは,栄養(食事)・身体活動・休養(睡眠)という健康の三要素に含まれない「ボディイメージ」に起因している可能性が示唆された.本研究では,日本語または英語で書かれた論文のみを対象にしたため,出版バイアスの可能性に留意する必要がある.また,採用した論文のほとんどが横断研究であったことから,因果関係を明らかにすることができなかった点にも留意する必要がある.やせの評価基準については国だけでなく,研究毎に異なる報告もあったため,今後は基準についても検討していく必要がある.