抄録
森林内の枯死木の分解速度の空間分布を調べるために,アカマツの材試験片を空間位置(地表面と地上150cm高さ)や地形要因(尾根部,斜面部,谷部)の異なる5地点に設置し,設置場所により変化する角材の環境要因と分解速度との関係を調べた。形状を揃えたにもかかわらず,角材の分解係数は0.004から0.316yr^<-1>までと大きく変動した。分解係数の変動のほとんどは角材の含水率によって説明された。土壌へ接触しない角材は含水率が低下した。土壌に接触した場合は,地表面の微妙な凹凸によって生じたリター層の厚さの違いによって,角材の含水率は大きく変動した。また,分解が進むに従い角材の基質の状態が変化し,角材の含水率に影響を与えた。したがって,森林内の枯死木の分解速度の空間分布を定量化する場合には,土壌との接触やリター層の厚さといった枯死木周辺の環境要因や,枯死木の基質によって変化する含水率の空間分布を考慮に入れるべきだと考えられた。