森林応用研究
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森林応用研究 23巻2号
森林組合におけるオフセット・クレジット(J-VER)制度の課題
兵庫県及び大阪府を事例に
石丸 嵩祐松下 幸司
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2014 年 23 巻 2 号 p. 1-10

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抄録

J-VER制度が2008年、環境省により導入された。地方自治体や社有林などの場合、一定規模のまとまりが期待できるが、私有林の場合、概して所有規模が小さい点が問題となる。本論文では、府県レベルにおいて森林組合が関係するJ-VER制度の現状分析を通じて、地方自治体・社有林以外における制度普及にあたっての課題を明らかにすることを目的とする。調査対象は、兵庫県森林組合連合会及び大阪府森林組合である。検討の結果、以下の課題が判明した。第一に、森林組合単独での事業実施は困難である。特に、クレジットの販売が困難と考えられ、プロバイダを利用するか、県レベルの組織の役割が重要である。第二に、J-VER制度は京都議定書に関連しているが、国際交渉の動向が不明である。吸収量の算定方法、クレジットの販売価格は、事業全般に影響を与える。第三に、森林施業計画の樹立または森林認証の取得が前提となっているが、この条件を満たす森林が限られている。以上の点を考慮すると、森林組合におけるJ-VER制度に基づく森林経営プロジェクトの急速な普及は難しく、森林吸収プロジェクトの導入をからめた森林施業の集約化が期待される。

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© 2014 応用森林学会
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