森林応用研究
Online ISSN : 2189-8294
Print ISSN : 1342-9493
ISSN-L : 1342-9493
森林応用研究 24巻1号
木材の長期需要予測に関する一考察
正木 隆文松下 幸司
著者情報
ジャーナル フリー

2015 年 24 巻 1 号 p. 1-8

詳細
抄録

木材の長期需要予測のためのモデルを作成し、2050 年までの予測を行った。木材を製材用材、合板用材、紙パルプ・チップ(以下、紙パ)用材に分け、それぞれモデルを作成した。外生変数には人口、一般経済指標、建築関連指標、技術変数を用いた。係数の推定方法は普通最小二乗法、使用データは原則として1960 年から2010 年の51 年間の年次データである。モデルの推定結果は以下の通りである。(1)製材分野では、建築関連指標、人口とGDP を加え有意となった。(2)合板分野では建築関連指標のほかGDP も有意となった。(3)紙パ分野では紙・板紙需要と古紙利用率を変数とするモデルが得られた。紙・板紙を用途別に分類しモデルを作成した結果、主に人口とGDP が有意となった。作成したモデルによる予測結果及び考察は以下の通りである。(1)人口減少の結果、2050 年の木材需要は減少する。特に製材用材需要の減少が大きい。(2)本モデルの2020 年予測結果を現行の森林・林業基本計画の2020 年の数値と比較した結果、製材用材と紙パ用材で異なる結果が得られた。(3)紙パ用材需要の割合がさらに大きくなることから、全体の自給率を議論する場合は広葉樹にも目を向ける必要がある。自給率は分母となる需要次第である。

著者関連情報
© 2015 応用森林学会
次の記事
feedback
Top