抄録
ブナ落葉上の菌類相の遷移を研究する上で菌類相の記述法の確立が重要である。本研究では,培地と培養期間が菌類相の記述に及ぼす影響について検討を加えた。材料は,京大芦生演習林において1996年12月に設置し,1997年9月に回収したリターバッグ内のブナ腐朽葉である。2種の栄養培地(_<LC>A:貧栄養,PDA:富栄養)を用いて菌類の分離を行い,種数および菌類相を比較した。その結果,_<LC>AではPDAに比べて有意に多くの種が出現した。これらの菌類相を比較すると,PDAでは成長速度の早い種が選択的に出現した。また2ケ月間,毎週平板を観察して菌類の出現を記録した結果,5週間目で全出現種数の80〜90%近くが出現した。したがって,栄養培地として貧栄養培地である_<LC>Aを用い培養期間を2ケ月間とするごとで,ブナ落葉上の菌類相の記述が有効に行えると考えられた。