2019 年 11 巻 p. 13-28
長時間作用性吸入抗コリン薬(LAMA) が喘息に適応拡大されたが、臨床現場でエビデンス 総体を理解することは難しかった。そこで、Sobieraj らが2018 年に発表した喘息患者における LAMAと吸入ステロイド薬との併用に関する系統的レビューを、AMSTAR2 で吟味した。吟味 の結果、研究の除外理由の説明と統計的統合に欠点があり、異質性についての十分な説明等 でも欠点を認めた。統計的統合の欠点は、クロスオーバー試験のデータ抽出および異なる効果量やQOL スケールの統合等であった。LAMAと長時間作用性β2 刺激薬(LABA)との比較について、これらの欠点をKewらのコクラン系統的レビューで使われた統合方法や標準化平均差を利用して対処することで、より多くの研究結果を統合できた。新たな統合結果に基づき、異質性の検討も含めて the Grading of Recommendations, Assessment, Development and Evaluation に準拠したSummary of Findings を作成し、エビデンス総体を把握した。その結果は、Sobieraj らのレビュー結果と比べて、より精確で現場での臨床決定に利用しやすいエビデンス総体の要約となったが、QOL のアウトカムを除いてレビューの結論に大きな相違はなかった。また、喘息治療で蓄積されてきたLABA のエビデンスと組み合わせたネットワーク・メタ解析を試行し、その有用性を確認した。