アプライド・セラピューティクス
Online ISSN : 2432-9185
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11 巻
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 緒方 宏泰
    2019 年 11 巻 p. 1-12
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/02/09
    ジャーナル オープンアクセス
    【目的】我が国の製薬企業が提供している全身適用の28 の糖尿病治療薬の臨床薬物動態情報を調査し、有効で安全な薬物治療を進めるための本来の目的にそった情報となっているかを検討した。 【方法】製薬企業編集の医薬品インタビューフォーム、および、製造販売承認時の審査報告書及び申請資料概要から情報を収集した。 【結果】F(バイオアベイラビリティ)値は13 薬物で、Ae(未変化体尿中排泄率)値は 7 薬物で、Vd(分布容積)値は13 薬物で、CLtot(全身クリアランス)値は12 薬物で、fuP(血漿中非結合形分率)値は24 薬物で収集できた。F、Ae、Vd、CLtot、fuP の5 パラメータ値の全てが得られたのは7 薬物に限られていた。binding insensitive(IS;fuP > 0.2)の特性を有している薬物は9 薬物であった。binding sensitive(S; fuP< 0.2)の特性を有している薬物は15 薬物あった。21 薬物で腎機能障害患者、肝機能障害患者を対象とした臨床薬物動態試験が行われ、血中総薬物濃度が測定されていた。S の特性を有する医薬品は血中総薬物濃度の変化率のみで用法・用量の調節の必要性を考察することは危険な医薬品であり、臓器障害時の非結合形分率の正常時に対する変化率の情報は必須の重要なものであるが、肝機能障害時に、イプラグリフロジン、ダバグリフロジンのみにおいて測定されていたに過ぎなかった。 【結論】患者の状態に対応して用法・用量の調整の判断を的確に行うための情報としては不十分な状況にあることが明らかとなった。
  • Sobieraj らの系統的レビューのAMSTAR2 による批判的吟味、 GRADE に準拠した要約およびネットワーク・メタ解析
    村山 隆之
    2019 年 11 巻 p. 13-28
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/02/09
    ジャーナル オープンアクセス
    電子付録
    長時間作用性吸入抗コリン薬(LAMA) が喘息に適応拡大されたが、臨床現場でエビデンス 総体を理解することは難しかった。そこで、Sobieraj らが2018 年に発表した喘息患者における LAMAと吸入ステロイド薬との併用に関する系統的レビューを、AMSTAR2 で吟味した。吟味 の結果、研究の除外理由の説明と統計的統合に欠点があり、異質性についての十分な説明等 でも欠点を認めた。統計的統合の欠点は、クロスオーバー試験のデータ抽出および異なる効果量やQOL スケールの統合等であった。LAMAと長時間作用性β2 刺激薬(LABA)との比較について、これらの欠点をKewらのコクラン系統的レビューで使われた統合方法や標準化平均差を利用して対処することで、より多くの研究結果を統合できた。新たな統合結果に基づき、異質性の検討も含めて the Grading of Recommendations, Assessment, Development and Evaluation に準拠したSummary of Findings を作成し、エビデンス総体を把握した。その結果は、Sobieraj らのレビュー結果と比べて、より精確で現場での臨床決定に利用しやすいエビデンス総体の要約となったが、QOL のアウトカムを除いてレビューの結論に大きな相違はなかった。また、喘息治療で蓄積されてきたLABA のエビデンスと組み合わせたネットワーク・メタ解析を試行し、その有用性を確認した。
  • 平成30 年度調剤報酬改定を踏まえて
    狭間 研至
    2019 年 11 巻 p. 29-36
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/02/09
    ジャーナル オープンアクセス
    2013 年に厚生労働省から示された「地域包括ケアシステム」という概念は超高齢社会となった我が国で、安心して過ごせる社会を作るためには不可欠だ。ただ、この枠組みの中で薬剤師は何をするのかということには議論がある。地域包括ケアにおいては医療の「ことがら」のほとんどは薬物治療が占める。高齢化に伴い複雑化する薬物治療支援のニーズが飛躍的に拡大するなかで、薬物治療の個別最適化が極めて重要であることを考えれば薬局・薬剤師が果たす役割は、入院、外来、在宅など全ての場面で重要になるはずだ。しかし、処方箋調剤業務を機械的にこなす「モノ」と「情報」の専門家としての従来の薬剤師であれば、機械化の進展、ICTの普及によりその重要性は相対的に低下する。一方、薬剤師が、薬を患者さんに渡すまでの仕事から、薬を服用した後の患者さんをフォローすることで前回処方の妥当性を薬学的に評価し、次回の処方内容の適正化につなげるという医師との協働した薬物治療を行う仕事にシフトすることで状況は一変する。このことは、薬を渡すまでとは対物業務、飲んだあとまでフォローするというのは対人業務であることを考えれば、「患者のための薬局ビジョン」に示された、「対物から対人へ」という方向性にも一致する。今後、多くの薬局・薬剤師が地域包括ケアシステムで活躍するようになるには、薬剤師の患者をアセスメントするための知識・技能・態度、薬剤師の患者を診るための時間・気力・体力とともに、調剤報酬の抜本的な改革が必要であると思われる。
  • 鈴木 賢一, 山本 信之
    2019 年 11 巻 p. 37-45
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/04/08
    ジャーナル オープンアクセス
    2012年「Cisplatinを含む高度催吐性化学療法施行時の嘔吐に対するグラニセトロン(以下GRA) 1 mgとパロノセトロン(以下PALO) 0.75 mgの二重盲検ランダム化比較試験:TRIPLE study」を実施した。これは全国から842例を集めて実施した第Ⅲ相試験であり、日本癌治療学会から推奨されている3剤併用標準制吐療法において、セロトニン受容体拮抗薬(5-HT3RA)の中ではどの薬剤を使用すべきかを検証した試験である。2010年に発売された5-HT3RAのPALOは長時間作用型であり、特に高度催吐性レジメンにおいて期待されていた。しかしながら従来の5-HT3RAに対し優越性を証明した試験は見当たらず、また他の5-HT3RAに比して高価であったため、臨床現場ではPALOを積極的に使用すべきか意見が分かれていた。筆者らはPALOの優越性を検証し、上乗せ効果を確認しなければ高価なPALOを安易に使用するべきではないと考え本試験を実施した。その結果、嘔吐や追加の制吐薬を使用しなかった (Complete response: CR)割合では統計学的な有意差はわずかに得られなかったものの、PALO群でより高い効果であった(CR率: PALO 65.7%, GRA 59.1% P = 0.0539)。業務の中で自らクリニカルクエスチョンを見つけ出し、解決のために大規模な多施設共同研究の実現につながった。この結果は本邦におけるガイドラインで引用されるに至ったが、実現するためには二重盲検化や他職種との協力、他施設間の連携など多くの準備が必要であった。本稿ではTRIPLE試験を通じて薬剤師が実施する臨床研究の意義を概説する。
  • 小茂田 昌代, 和田 猛, 高橋 秀依, 嶋田 修治, 真野 泰成, 鈴木 立紀, 高澤 涼子, 尾関 理恵, 青山 隆夫
    2019 年 11 巻 p. 46-51
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/04/08
    ジャーナル オープンアクセス
    日本におけるアカデミック・ディテーリングは、公正中立な基礎を臨床につなぐ科学的視点に焦点を当て、医薬品比較情報を能動的に発信する新たな医薬品情報提供アプローチと位置づけ、アカデミック・ディテーラーの使命は医師の処方に影響を与え、処方を最適化することにあるとした。そして、薬剤師の専門性を確立する導入教育体制作りに寄与すべく、アカデミック・ディテーリング教育プログラムを開発した。教育プログラムは、4年前期選択授業「アカデミック・ディテーリング基礎演習」として、基礎薬学と臨床薬学の教員が協働して授業を行い、教育のねらいとして、「化学、薬理、薬物動態、ゲノムなどの薬学的視点から、医薬品の使い分けポイントをわかりやすく発表ができる」とした。ルーブリック評価の評価視点は「アカデミック・ディテーリングの理解」、「病態の理解と薬理学的視点での医薬品選択」、「薬物動態の観点からの医薬品選択」、「化学構造式の観点からの臨床活用」とした。学生からは、薬理学、化学、薬物動態学等これまでに習った知識がどのように患者に活かすかが分かったという意見がある一方で、ディスカッションと講義の時間のバランスに更なる検討が必要と考えられた。卒後研修としてもアカデミック・ディテーラー養成プログラムを開始しており、今後はアカデミック・ディテーリング教育が多くの薬学部で始まることを期待する。
  • 土井 信幸
    2019 年 11 巻 p. 52-59
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/04/08
    ジャーナル オープンアクセス
    在宅患者のケアプランにおいて疾患の具体的な維持・管理目標(検査値・バイタルサイン等)(以下:維持・管理目標)が示されず、単に「処方された薬を確実に服用すること」が目標となっていることがある。この場合、患者の疾患の維持・管理目標が不明瞭であり、多職種で目指す治療の達成目標が曖昧なケアプランが実施されることになる。したがって、利用者に対して多職種連携を通じた適切な疾患治療を提供する上でもケアプランに具体的な維持・管理目標を明記することは重要である。そこでケアマネジャーがケアプランを作成する際に、医師から具体的な治療の維持・管理目標が提供され、どの程度の割合で記載しているのかを調査した。 ケアプラン作成時の患者の具体的な管理目標の記載について調査した結果、医師の指示もしくは患者の状況に合わせて記載している割合の合計は43%で、具体的な管理目標を「記載していない」と回答した割合は55%であった。循環器疾患、糖尿病、腎機能低下、痛みに関するケアプランの約4〜6割において患者の具体的な治療の維持・管理目標が医師から指示されていなかった。ケアマネジャーからの維持・管理目標に関する医師への照会に対して回答のない理由のひとつに「医師の多忙さ」があった。しかし、この照会内容は薬剤師からの医師への問い合わせにより解決可能な内容が多く含まれており、薬剤師がケアプラン作成へ積極的に関与することが望まれる。
  • 中村 郁代, 佐藤 美弥子, 大向 香織, 長沼 未加
    2019 年 11 巻 p. 60-66
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/04/08
    ジャーナル オープンアクセス
    ワルファリンは相互作用が多い薬剤であり、服用期間中のPT-INRのモニタリングが重要である。今回、心臓移植へのブリッジ(以下、BTT)として補助人工心臓(以下、VAD)を装着している患者1名について、薬剤師としてPT-INRモニタリングおよびVAD装着後のサポートを行ったので報告する。 患者は、20XX年より当薬局へ来局し、20XX+12年に心臓移植を登録、その4ヶ月後にVADを装着したのち20XX+16年に心臓移植を行った。心臓移植にまつわる治療の過程で通院先の医療機関は4ヶ所に増えたが、患者の負担を軽減できるよう検査値共有のための連携を働きかけた。また、不安になりがちな患者の心境を、患者を励まし続けることでサポートした。サポートとしては電話での24時間対応および、自らがHeartMate Ⅱ®(VAD)介護者の資格を取得することで患者が安心して生活できるように環境を整えた。この事例を通じ、患者の治療へ積極的に薬剤師が介入することは、患者の心身精神的負担の軽減につながるのではないかと考える。
  • 真野 俊樹
    2019 年 11 巻 p. 67-74
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/04/08
    ジャーナル オープンアクセス
    日本に暮らす外国人(在留外国人)、観光やビジネスで日本を訪れる外国人(訪日外国人)は増加の一途を辿り、それに比例するように日本国内の医療機関を受診する外国人患者は増え続けている。この動きは、2020年の東京五輪に向けてさらに今後も加速することが予想される。 そのような社会情勢の中、外国人患者への対応は、薬局も含めどの医療機関にとっても重要な課題の一つとなっている。さらに、観光客以外の流動化の対象には、労働者:コンビニなどで働く人、高度人材:看護師、介護師含む、患者などがあげられる。外国人の増加は一時的な現象ではなさそうで、観光庁によれば訪日外国人の4%が医師を受診する可能性があるともいわれる。 2017年、訪日外国人は2869万人であるので医師受診の可能性は100万人を超え、社会問題となってきている。 この中で、薬局にも外国人対応が求められているといえよう。そしてその中には、世界的に見た薬物療法の標準化も含まれると思われる。
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