失語症研究
Online ISSN : 1880-6716
Print ISSN : 0285-9513
ISSN-L : 0285-9513
原著
レンズ核および視床損傷例の失語症状の経過
佐野 洋子加藤 正弘宇野 彰小嶋 知幸
著者情報
ジャーナル フリー

1993 年 13 巻 4 号 p. 296-305

詳細
抄録
    視床, 被殻を中心とした大脳基底核に責任病巣を求めた視床失語, 被殻失語の存在が提唱され久しいが, 視床や被殻を失語症発生の責任病巣とすることには議論があり, 必ずしも定説を得ていない。今回, われわれは, CT および MRI 所見で, 被殻を含むレンズ核, または視床に主病巣を認めた右利き左半球損傷 55名において, 失語症状の発生および経過を検索し, 次のような結論を得た。
    1. レンズ核に限局した病巣の症例では失語症状は残存しない。失語症状残存例では, 弓状束, 皮質下, 皮質への病巣の伸展や, 脳室拡大を伴っていた。このことからレンズ核は失語症の責任病巣とは考えにくい。
    2. 視床損傷で長期経過後も, きわめて軽い言語機能の障害を認めることがあるが, これらは失語症状とは質の異なるもので, 注意の障害など他の要因により説明することが妥当と考える。
    3. 被殻失語, 視床失語などの用語は, 再検討の必要があろう。
著者関連情報
© 1993 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会 (旧 日本失語症学会)
前の記事 次の記事
feedback
Top