認知心理学研究
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文章理解における文脈制約が下位目標・上位目標・因果的前提の推論に及ぼす影響
猪原 敬介堀内 孝楠見 孝
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2008 年 5 巻 2 号 p. 141-152

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抄録

本研究では,スクリプトに基づいた文章において生じるオンライン推論について検討した.因果的前提の推論(例:この事故はなぜ起きたのか),上位目標の推論(例:彼はなぜそのようなことを言ったのか),下位目標の推論(例:彼女はどのようにして大金を稼いだのか)という3タイプの推論が取り上げられた.コンストラクショニスト理論(Graesser,Singer,& Trabasso,1994)では,下位目標の推論はオフラインでしか起こらないと予測されている.本研究では,スクリプトに基づいた文章がオンライン推論を促進すると仮定され,参加者に呈示された.本研究で行われた2つの実験では,参加者は8つのストーリーを読み,行を再認項目とする再認課題を受けた.さらに実験2では,実験1の手続きに加えて再認課題への学習意図が操作された.結果は,直前の行が削除される条件において,推論タイプおよび学習意図にかかわらず,読み時間が増加した.さらに,文章中から削除されていた行が再認項目として呈示された際の正棄却時間,虚再認率が読み時間と同様のパターンで増加した.これらの結果は,コンストラクショニスト理論の予測に反し,読み手が因果的前提の推論および上位目標の推論のみならず,下位目標の推論をもオンラインで推論していることを示唆した.

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© 2008 日本認知心理学会
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