失語症研究
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相貌失認とコバート認知
小山 善子鳥居 方策山口 成良
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1995 年 15 巻 3 号 p. 242-248

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抄録

熟知された人物の顔に対する視覚認知の障害である相貌失認には,近年その非均質性が指摘されていて, De Renzi ら(1991)や Benton (1993)は相貌失認を統覚型 apperceptive form と連合型 associative form の2型に分け論じている。この連合型と思われる症例の中に, Bruyerら(1983)が最初に報告したような overtly に認知できない有名人の顔写真から,意識にのぼらないレベルで familiarity を感じていたり,顔に関する何らかの視覚情報を得ていると考えられる covert 認知の存在が示唆される者がみられることがある。両側後頭葉損傷で相貌失認と大脳性色覚喪失を呈したわれわれの症例もこの covert 認知が認められた。本症例は未知相貌の弁別学習障害は比較的軽度で,視知覚の障害は軽微で連合型と考えられた。 covert 認知は熟知相貌と未知相貌の弁別,指示課題,選択肢からの同定,職業推定,学習課題の成績から確証された。covert 認知は相貌失認のメカニズムを考える上で興味ある現象である。

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© 1995 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会 (旧 日本失語症学会)
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