失語症研究
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原著
失語症者の助詞選択に関する計量国語学的検討(1)
—名詞と助詞の結びつきを中心に—
小嶋 知幸宇野 彰餅田 亜希子中野 洋加藤 正弘
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1995 年 15 巻 3 号 p. 249-261

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抄録
失語症者の助詞選択のストラテジーについて,主に名詞と助詞の結び付きという観点から検討した。課題は選択式による助詞穴埋め課題である。問題文は「名詞 (助詞) 動詞」の2語文で,あらかじめ名詞の出現度数 (語頻度) と,5つの格助詞が名詞に結合する頻度を調査した。語頻度調査は,正常者の話し言葉の計量言語データ (総語数494, 956語) を用いた。問題文は総数233で,含まれる助詞は「を」 (76) 「から」 (4) 「が」 (67) 「で」 (25) 「に」 (30) である。また,名詞句 (名詞+助詞) の意味役割が動詞にとって必須成分である文197,任意成分である文27である。対象は慢性期失語症者40例(Wernicke 14 例, Broca 9 例,混合3例,伝導4例,健忘10例) 。結果, 1. (a) 名詞と助詞との結合頻度, (b) 動詞からみた名詞句の意味役割の必須/任意性が助詞選択の難易度に影響を与えていた。 2.理解障害の重症度が助詞選択能力に反映されていた。
著者関連情報
© 1995 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会 (旧 日本失語症学会)
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