失語症研究
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原著
脳梁出血例にみる意図的行動の制御
前田 真治長澤 弘正木 かつら古橋 紀久後藤 安恵
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1995 年 15 巻 3 号 p. 262-269

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抄録

近年,前頭葉内側面~脳梁前方損傷に伴う症状として,道具の強迫的使用現象などが報告されている。今回,脳梁前方~両側前頭葉内側面の出血に伴い,左右手と右足の無目的で無意識な動きに加え,右手の道具の強迫的使用現象を認めた症例を経験した。その際,口は右手の動きに協調し,歯ブラシを持っていくと口が開けられた。文献29例の検討では,手が口や頭と協調して動くのは9例,しないのは6例で,一定の傾向がなく,頭部が手と異なった制御様式をもつと推測された。また,右手足は言語命令には従うが随意的に動かず,左手足は随意的に動くことを認めた。このことから,いわゆる意図的行動の制御中枢が右前頭葉にあると考え,損傷部位との対応で半球間・半球内離断が存在すると考えられた。さらに,手足の特異的な動きの他に,唇・舌・頸の無意識で無目的な動きが経過中にみられた。この動きは,手足にみられる alien-sign が唇・舌・頸に出現したとも考えられた。

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© 1995 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会 (旧 日本失語症学会)
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