失語症研究
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シンポジウム
“ひとつの基準 (セット) への固執” について
—前頭前野を中心とする梗塞例の11年間の症状の経過—
鹿島 晴雄
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1996 年 16 巻 2 号 p. 179-187

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抄録

左前頭前野領域の梗塞を有する症例の11年にわたる経過と症状を紹介した。発症1年目は発動性低下や易疲労性とともに, “頭の切り替えがうまくできない” “二つのことをしようとすると,片方のことが頭からなくなってしまう” “言葉がなかなか浮かんでこない” などの訴えがみられ, working memory の障害によるものと考えられた。発症4年目に簡便 Attention Process Training を10週間実施し,以後,発動性の改善と社会的外向が認められるようになる。発症11年目の現在,なお軽度の強迫傾向と, “頭の切り替えがうまくできない” “几帳面すぎる日課をたて,臨機応変ということがない” “自分の行動に関し何も決められないのは困る” などの訴えが認められる。本稿では,これらの訴えを “ひとつの基準 (セット) への固執” として解釈しうることを述べ,その要因としてセットの転換障害 (高次の保続) と情報の組織化の障害を指摘した。

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© 1996 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会 (旧 日本失語症学会)
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