失語症研究
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シンポジウム
記憶障害の経過—頭部外傷例の考察—
今村 陽子
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1996 年 16 巻 2 号 p. 172-178

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抄録
頭部外傷例の記憶障害について長期経過における回復要因を考察した。対象は,受傷時および急性期に意識障害を伴っていた頭部外傷例で,1年以上を経過した時点で知的機能評価が必要とされた 11例である。言語性の即時記憶と中間期記憶に関連する5単語即時再生,5単語の5分後再生,数唱問題,数唱学習の4項目を検討した。病巣についてはCTあるいはMRIで同定した。 7例が記憶障害を訴え,全例5単語の5分後再生が低下していた。4例には記憶障害の訴えがなく,5単語の5分後再生は正常範囲の成績であった。前者の病巣部位は左側頭葉が3例であり,禰漫性病巣が4例であった。言語性の記憶障害は左側側頭葉が病巣として関連を持っているが,長期経過の中で回復の見込まれる病巣は,左側側頭葉後方外側皮質であり,左側側頭葉前方,内側面で皮質および皮質下に病巣が広がる病態では回復が困難であった。
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© 1996 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会 (旧 日本失語症学会)
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