発話促進法について,訓練効果のデータに基づいた4種類の報告を行った。 (1) 漢字を用いた訓練法と復唱的呼称訓練との比較, (2) 仮名音読,漢字音読を用いた呼称訓練と復唱的呼称訓練との比較, (3) 漢字音法力と呼称力との相互作用, (4) 伝導失語症者における復唱と仮名音読との相互作用に関する研究などである。その結果,障害の重いモダリティを訓練対象とするよりも保たれているモダリティを促進した方が有効であった。たとえば,聴覚的言語時報処理過程の障害が重篤な症例では,必ずしも聴覚的刺激が有効なのではなく,視覚的言語刺激を積極的に活用した方が効果的な場合があることを示した。また,聴覚的刺激と視覚的刺激とが同様に効果的な症例でも,自習がおこなわれやすいという点て,視覚的刺激が有用であると思われた。教材や訓練法の選択は,障害の機序によって変えるべきであり,認知神経心理学的なアプローチが重要であると考えられた。