抄録
【目的】グルテンフリーパンは、パンの基本骨格となるグルテンを含まないため、発酵や焼成時に発生した気泡を保持できず、膨化が不十分となる。この解決策として、キサンタンガムや澱粉などの増粘剤の添加によって生地の粘性を変化させる方法が報告されている。澱粉は糊化する事で増粘剤としての役割を果たすが、澱粉糊の性状は原料の違いや架橋化などの加工処理によって大きく異なる。本研究では、うるち米粉、もち米粉、タピオカ澱粉及びその加工澱粉で調製した糊を添加したグルテンフリーパンを焼成し、パンの品質を比較検討した。
【方法】市販のうるち米粉(NGR)、もち米粉(GR)、タピオカ澱粉(TS)、リン酸架橋酵素処理タピオカ澱粉(PE)及びアセチル化リン酸架橋酵素処理タピオカ澱粉(APE)をそれぞれ水と共に加熱糊化したものを糊試料とした。各糊試料の粘度特性は、RVAを用いて測定した。製パン試験は、糊試料、水、うるち米粉、グラニュー糖、食塩、オリーブ油、ドライイーストを混合し、ホームベーカリーを使用して焼成した。焼成したパンは、外観・断面の観察、比容積及びクラムのテクスチャー測定を行い評価した。
【結果】パンの比容積は、NGR糊添加パンと比較して、GR糊添加パンは小さく、TS糊添加パンは同等、PE糊及びAPE糊添加パンは大きくなる傾向を示した。GR糊添加パンは内部に空洞が生じ、他のパンと比較して内相が粗かった。一方、PE糊添加パンは他のパンと比較して微細な内相であった。パンクラムのテクスチャーは、GR糊添加パンが最も硬く、凝集性も低かった。NGR糊、TS糊、PE糊、APE糊添加パンの硬さ及び凝集性は、いずれもほぼ同等であった。