失語症研究
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原著
標識描画検査より見た失語症者のイメージ能力に関する一考察
西田 桂太郎矢野 和美荒井 寿美北村 淑子竹田 契一
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1997 年 17 巻 2 号 p. 164-169

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抄録

    失語症者のイメージ能力を調べるために,失語症者33名と健常者7名を対象に,Tsvetkova (1972) の検査をもとにした標識描画検査を行った。同検査は,具体的対象物名 (みかん/りんご/すいか,ほか) とカテゴリー名 (鳥/動物/昆虫) ,およびそれぞれの組について3つの同じ図形を検者が呈示し,被検者が名前に従って図形から絵を完成するものである。描かれた対象独自の属性—標識の数を重症度別群および対照群 (非失語群) 間で比較した。
    (1) イメージできる標識数は失語症の重症度と関連していた。被検者は,3つの同じ図形を標識のイメージを検索しながら違ったものにしあげなければならない。その随意性の高い選択の操作と語想起機能とのかかわりが想像された。 (2) 軽度失語群と対照群 (非失語群) では,具体的対象物名条件とカテゴリー名条件での産生標識数の相関がみられないことより,中等度失語群にないイメージ操作のしかたの変化が起こっていることが示唆された。

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© 1997 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会 (旧 日本失語症学会)
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