失語症研究
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非流暢性失語に対するモーラ指折り法の効果
會澤 房子
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1997 年 17 巻 3 号 p. 203-207

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抄録

モーラ指折り法によって顕著な改善を呈した4例を報告する。症例1 : 61歳,男性,aphemia,右利き。自発・復唱ともに非流暢で抑揚に乏しく,努力性・断綴性が強い。音の置換,歪み,音・音節の繰り返しが著明。症例2 : 67歳,男性,重度Broca失語,右利き。発語はンー,マママのみ。症例3 : 51歳,男性,重度Broca失語,右利き。発語はンート,エートのみ。症例4 : 39歳,男性,重度 Broca失語,右利き。言語的反応はまったくみられず,わずかに表情の変化あり。訓練結果 : 症例の特徴は以下に要約される。 (1) 一定速度下での指折りと構音の同時進行によって努力性の緩和,連結されるモーラ数の増加,音韻性錯語の減少が認められた。 (2) 指折りと構音が同時進行していても,同一単語や文のなかで部分的に速度の変動を生じる場合があった。考察 : 非流暢性失語における構音の形成は,指折りによる体性感覚などのルートを使って改善させている可能性がある。

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© 1997 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会 (旧 日本失語症学会)
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