失語症研究
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17 巻 , 3 号
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フォーラム
  • 柏木 敏宏
    1997 年 17 巻 3 号 p. 201-202
    発行日: 1997年
    公開日: 2006/05/12
    ジャーナル フリー
  • 會澤 房子
    1997 年 17 巻 3 号 p. 203-207
    発行日: 1997年
    公開日: 2006/05/12
    ジャーナル フリー
    モーラ指折り法によって顕著な改善を呈した4例を報告する。症例1 : 61歳,男性,aphemia,右利き。自発・復唱ともに非流暢で抑揚に乏しく,努力性・断綴性が強い。音の置換,歪み,音・音節の繰り返しが著明。症例2 : 67歳,男性,重度Broca失語,右利き。発語はンー,マママのみ。症例3 : 51歳,男性,重度Broca失語,右利き。発語はンート,エートのみ。症例4 : 39歳,男性,重度 Broca失語,右利き。言語的反応はまったくみられず,わずかに表情の変化あり。訓練結果 : 症例の特徴は以下に要約される。 (1) 一定速度下での指折りと構音の同時進行によって努力性の緩和,連結されるモーラ数の増加,音韻性錯語の減少が認められた。 (2) 指折りと構音が同時進行していても,同一単語や文のなかで部分的に速度の変動を生じる場合があった。考察 : 非流暢性失語における構音の形成は,指折りによる体性感覚などのルートを使って改善させている可能性がある。
  • 浅野 紀美子
    1997 年 17 巻 3 号 p. 208-212
    発行日: 1997年
    公開日: 2006/05/12
    ジャーナル フリー
    全失語を呈する症例のコミュニケーション行動を,次のような観点から記述した。 (1) コミュニケーションの文脈 : 患者の身体的—情動的状態に基づく文脈 (これをここでは「内的文脈」と呼ぶ) を,どう理解するか。患者の置かれた環境,患者とかかわる人,患者の生活の時間など,患者の周囲の文脈 (これを「外的文脈」と呼ぶ) を,どのようにして患者の「内的文脈」に取り込めるようにするか。 (2) メッセージ : 双方の主体のやりとり関係を維持するための行為・言語 (相互性) 。主体の意図,欲求,指示などを伝え,あるいは伝えられ,それを状況に反映させるための行為・言語 (伝達性) 。主体の知識,経験,思考などを伝え,共有するための行為・言語 (情報性) 。これらのメッセージが,どのようなかかわりのなかで交換されるか。 (3) コミュニケーションの手段 : 身体全体,身体の一部,表情,発声などの身体的表現。事物の提示や指さしによる指示的表現。ものまねや身ぶりによる象徴的表現。言葉や文字による言語的表現。これらの表現手段が,メッセージの交換のなかで変化したか。
  • 立石 雅子
    1997 年 17 巻 3 号 p. 213-217
    発行日: 1997年
    公開日: 2006/05/12
    ジャーナル フリー
    失語症者の社会適応について,55名 (Wernicke失語23,Broca失語17,失名詞失語15) の慢性期失語症者を対象とし,患者個人の要因に注目して検討した。適応良好を患者,家族ともに困っていない状態と定義した。その結果,適応の良否とSLTA総得点,およびCADL得点との間には一定の関係を認めなかった。本人,および家族に対する面接と質問紙による調査から,適応良好な症例を特徴づける要因として,障害に対する本人の理解,病前性格,家族の理解,脳損傷による器質的人格変化の4つが抽出された。自己の障害を理解している適応良好例では病前性格が循環気質である症例が多く,一方,自己の障害に対する理解が不十分で適応良好な例は,家族が患者の状況をよく理解している症例であり,また器質的人格変化が抑うつなどの反応を惹起せず,適応良好となった症例も認められた。言語訓練の実施に際して言語機能の重症度のみならず,個人にかかわる要因の検討も重要である。
  • 林 耕司
    1997 年 17 巻 3 号 p. 218-221
    発行日: 1997年
    公開日: 2006/05/12
    ジャーナル フリー
    失語症者に対する言語治療の目的が失語症者に日常生活での意味ある参加を促し,社会的不利の軽減と障害の受容を促すことにあるとするならば,失語症者が環境に適応しようとするつど立ち現れてくるさまざまなバリアー (障壁) を取り除くべく果敢に挑戦していくのが言語治療士の重要な仕事だと考えられる。本稿ではまず,人間は関係のなかで生きており,そのなかで得た病は積極的意味を持つという視点を提供した。さらに,地域に復帰していく失語症者を支えるという言語治療士の役割の視点から,失語症言語治療の枠組みのなかに言語ボランティアを導入し失語症者の生きがいを援助してきている実際の活動の “言の葉の会活動” と “病院言語ボランティア活動” を紹介した。そして,言語ボランティアがもたらす意味を考察し,併せて失語症者自身がトーンチャイムを利用してボランティア活動を行っていることも紹介した。
指定発言
原著
  • 下馬場 かおり, 小嶋 知幸, 佐野 洋子, 上野 弘美, 加藤 正弘
    1997 年 17 巻 3 号 p. 224-232
    発行日: 1997年
    公開日: 2006/05/12
    ジャーナル フリー
        失語症状の長期経過を追跡する研究の一環として,失語症者の発話障害の長期経過を自発話,復唱,音読のモダリティ別に調査した。対象は,発症後16ヵ月以上最高287ヵ月経過した失語症者61例の文水準の標準失語症検査 (SLTA) 発話成績である。
        〈結果〉SLTA でみる限り, (1) 3モダリティのなかで復唱はもっとも到達水準が低かった。 (2) 各モダリティの最高到達時の成績パターンは,本研究では6種に類型化が可能であった。 (3) 最高到達時の成績パターンは,発症初期には必ずしも同一のパターンではなかった。
        〈結論〉(1) 失語症者にとって,文の復唱はもっとも難易度が高いと考えられた。 (2) 発話3モダリティは,発症年齢,病巣などの要因の関与により,異なる過程を経て特定のパターンに到達することが示唆された。(3) 以上の点は,発話障害の予後推測や,訓練の刺激モダリティ選択において有用な情報を提供すると考えられた。
  • 三宅 裕子, 川村 純一郎, 波多野 和夫
    1997 年 17 巻 3 号 p. 233-240
    発行日: 1997年
    公開日: 2006/05/12
    ジャーナル フリー
    左前頭葉の脳腫瘍摘出後,明らかな失語症や知的機能の低下を伴わずにGerstmann症候群の4症状を呈した1例を経験した。症例は31歳の右利き女性。左中前頭回皮質下に良性神経膠腫が認められた。術後,神経学的には異常所見はなかったが,手指失認,左右障害,失書,失算を呈した。聴理解は良好,発話は流暢,呼称,復唱,音読に障害はなかった。知的能力は保たれていた。構成失行やその他の失行,失認は認められなかった。本例の場合,手指失認は言語性の誤りであり,失書は想起困難が主体であったが,左右障害は言語性の障害のみでは説明できず,失算も失語性の誤りはなく演算の障害であった。
        左前頭葉病巣による本症候群の報告はきわめてまれである。本例は,4症状が左前頭葉病巣により生じたこと,明らかな意識障害や失語症,知的機能低下を伴わずに出現したこと,の2点において特徴的であり,本症候群の独立性や症候学的特徴を検証するうえで貴重な示唆を与える症例と思われた。
  • 毛束 真知子, 河村 満
    1997 年 17 巻 3 号 p. 241-248
    発行日: 1997年
    公開日: 2006/05/12
    ジャーナル フリー
    左一側性病変で聴覚性失認を呈した症例を報告した。症例は93歳の右利き女性で,X線CT,MRIで左上側頭回に梗塞性病変が明らかであり,両側の側脳室後角周囲に異常所見 (X線CTで脳室周囲低吸収域,MRIT2強調画像・プロトン強調画像で高信号域) が認められた。意識は清明で痴呆はなく,聴覚性失認以外に神経学的な異常は認められない。言語音,環境音,音楽のすべてに重篤な聴覚性認知障害がみられ,軽度の感覚性失語,表出性の失音楽を随伴していた。聴覚性失認は通常両側の聴覚野病変で生ずるとされ,左一側性病変例はきわめてまれである。本症例の症候は,左聴覚野からWernicke野への連合線維の障害に加えて,言語音・環境音を伝える右半球からの交連線維が左半球内で離断されたために生じた可能性とともに,左右半球の側脳室後角周囲の異常が聴覚情報の処理を妨げている可能性も考えられた。
  • 仲秋 秀太郎, 吉田 伸一, 中島 理香, 濱中 淑彦, 中村 光
    1997 年 17 巻 3 号 p. 249-257
    発行日: 1997年
    公開日: 2006/05/12
    ジャーナル フリー
    左前頭葉後下部 (左下前頭回後部と中前頭回後部,中心前回下部) のほぼ同一の部位に限局した梗塞巣を持ちながら,発話流暢性や復唱などの点で異なった失語像を示した2症例を報告する。2症例とも発症直後は無言状態であったが,症例1は発症6日後には復唱不良な非流暢型失語を呈し,症例2は発症20日後には軽度の超皮質性感覚失語に移行した。発症早期に異なった失語像が出現した理由として,一過性に起こった病変部周囲の機能的障害が考えられた。また,中心前回下部への侵襲の微妙な相違も2症例の構音および復唱の障害の有無と関連すると推測された。また,症例2は文の復唱は良好にもかかわらず,数唱は悪く,このことから文の復唱と数唱の2つのルートが乖離して存在することが示唆された。さらに,症例1の失語像も発症後約半年には流暢型に改善したことから,左前頭葉後下部の限局病変で非流暢型失語が出現しても流暢型失語に移行すると考えられた。
  • 永井 知代子, 原 由紀子, 岩田 誠
    1997 年 17 巻 3 号 p. 258-265
    発行日: 1997年
    公開日: 2006/05/12
    ジャーナル フリー
    緩徐に進行する肢節運動失行症の一例を報告した。症例は69歳,右利き男性。65歳ころより右手指巧緻運動障害が徐々に進行。神経学的には運動・感覚系ともに異常を認めず,腱反射のみ右上下肢で亢進している。WAIS-R では IQ115 と知能は保たれている。失語・失認は認めない。行為障害の主体は右上肢遠位部における巧緻運動の拙劣さであり,近位部の単純動作では拙劣さは目立たない。自動性・意図性間で解離はみられず,模倣・道具使用いずれにおいても同様の障害を認めた点から肢節運動失行と考えられた。MRI では両側前頭葉の萎縮および中心溝付近では左側優位の萎縮を認める。99mTc-ECD SPECT では両側上中前頭回,左側頭葉および左中心溝付近で前方優位の血流低下がみられた。本例はこれまでの緩徐進行性失行症の報告例と比較して,より純粋に失行症状のみを呈した点が特徴的であり,corticobasal degeneration として報告されている症例との比較も含め考察した。
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