抄録
本論文では,まず文理解課題と動作の系列予測課題に関するfMRI実験を紹介した。続いて,これらの実験結果と多くのイメージング研究で得られている知見を基礎にして,構文処理における前頭—頭頂ループの役割について考察を行った。その結果,中心前回と下頭頂葉のループにより,手や構音のイメージ生成・操作が実現されることが示唆された。文を処理するときには,ブローカ野と縁上回の間の情報交換により構音情報が生成され,これに基づき,ブローカ野および中前頭回に蓄えられた構文的知識と,45野と側頭葉との相互作用により生成された意味情報が統合される。さらに,前頭葉背外側部,補足運動野と頭頂間溝,下頭頂葉の相互作用により,イメージの生成・操作がなされるものと考えられた。さらにわれわれが提案した「運動系列予測学習仮説」によって,このモデルがより広い枠組みでとらえられることを示した。