失語症研究
Online ISSN : 1880-6716
Print ISSN : 0285-9513
ISSN-L : 0285-9513
シンポジウム
失文法患者に対する動詞の訓練
滝沢 透
著者情報
ジャーナル フリー

2000 年 20 巻 3 号 p. 202-210

詳細
抄録
統語論的失文法の発現には動詞の障害が大きくかかわり,動詞は文構成のキーワードである可能性が高いと考えられたので,動詞に焦点を当てた2種類の言語訓練を統語論的失文法患者2人 (AK と AH) に実施した。1つは動詞の単独訓練であり,動詞の中核的な意味の理解と音韻的形態の回収を目標にした。もう1つはマッピングセラピィであり,動詞を基準に構成される意味役割の同定とそれらの統語構造へのマッピングを行う方法である。その結果,AK は2種類の訓練であまり改善を示さなかった。これは AK の失語症状が全般的に重篤であることに主に起因すると考えられた。AH は動詞の単独訓練で著しい改善を示し,動詞の産生と動詞を含む文の産生が良好になった。マッピングセラピィにおいても,動詞の単独訓練ほどではないが,改善を示し,文の産生が増加していた。AH の改善は自然治癒や言語機能の全般的活性化ではなく訓練によって生じたものと考察された。
著者関連情報
© 2000 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会 (旧 日本失語症学会)
前の記事 次の記事
feedback
Top