46歳,右利きの女性。脳出血後より,左手の失書,右手の病的把握反射,右手の物品の強迫的使用行為,左手優位の両手の観念運動失行が出現した。頭部MRI検査では,左側の前頭葉内側面から前部帯状回の一部および脳梁体~膨大部に及ぶ病変を認めた。
本例では,病的把握反射が補足運動野の損傷なしに出現した点が注目された。物品の強迫的使用行為は本例の意志に反して “物品を使用したい” という強迫的な意図が発生することにより惹起された。
われわれは前補足運動野の損傷を重視し,前補足運動野を介する神経経路,特に視床~運動野間の神経結合の途絶が病的把握反射および物品の強迫的使用行為に関与すると考察した。
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