失語症研究
Online ISSN : 1880-6716
Print ISSN : 0285-9513
ISSN-L : 0285-9513
指定討論
相貌認知の特殊性と生得性
永井 知代子
著者情報
ジャーナル フリー

2001 年 21 巻 2 号 p. 133-141

詳細
抄録
相貌認知の特殊性について,相貌失認と Williams症候群研究の立場から言及した。まず相貌失認に関しては,モーフィングによる合成顔画像を用いた新しい相貌認知検査の結果から,相貌失認では相貌弁別精度が著しく低いが,一方でより類似した顔を似ていると判断する傾向は健常者同様であることを示した。これはカテゴリー知覚を反映しており,相貌失認の障害レベルが専門性で規定される可能性を示唆する。近年の fMRI研究ではこの可能性を支持する所見も得られており,従来の相貌認知特殊説に疑問を投げかけている。また,Williams症候群は障害が顕著な視空間認知に比して相貌認知が良好であることから顔モジュール説を支持する疾患とされてきたが,全体情報ではなく部分情報から認知しているとの報告もあり,認知の方法自体が正常とは異なる可能性が指摘されている。このように,相貌認知は特殊である,と断言するにはまだ克服すべき問題が残されている。
著者関連情報
© 2001 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会 (旧 日本失語症学会)
前の記事 次の記事
feedback
Top